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ep372 ページ25

来る日も来る日も墓の前で懺悔した。

当然のように自分を信じられなくなった。


攘夷だなんだと言いつつ、ただ松陽を取り戻したい、その私欲の為だけに、それ以外の人間を駒の如く犬死にさせたようにしか思えなくて。


攘夷戦争の末に残ったのは無数の墓と松陽のいなくなった世界だけ。それらに何の意味も感じられなくなって私は逃げ出した。

銀時達だって同じ痛みを抱えていたのは分かっていたのに、自分が壊れないようにするのに精一杯で目を背けることしかできなかった。


あの時、

互いの手を取り合って涙を流せば……それでも私達が生き残ったことに意味はあると背をさすり合うことが出来ていたのなら……


彼等が並び立つ今のこの景色は、もっと当たり前の“日常”だったのだろうか。



 





きっと今そんなことを考えても何にもならないけれど。

私には松陽と彼等しか無かったから。

それを同時に失ったのは……もし子供みたいなことを言っていいのなら本当につらくて、苦しくて——……仕方がなかった。

永遠に真っ暗な闇の中だけを歩いているようで。そう強いられているようで、生きにくさに息が詰まった。


でも私の中の松陽はそれを理由に立ち止まることを許してくれなかった。
自分の道だけは違えるなと、あの底知れない笑みで言うから……

きっとアイツらも同じなんだろうと思って、参謀だけは辞めなかった。


その代わりに二度と私達が同じ場所に集まって手を取り合うことなんて無いように。おかしな条件までつけて雇われ参謀をしていたというのに……


結局また私達の道は交わってしまった。


お互いがお互いに交わりたくないと紆余曲折してもがいて足掻いた結果がこれだなんて……本当に人生ってやつは滅茶苦茶なことをやってくれる。


でも彼等と離れていた時だって、私はきっと心のどこかで彼等との時間を良い意味でも悪い意味でも心の拠り所にしていたんだ。


私の世界も今となっては松陽と彼等以外の大切なものが両手に余るほどある。
私には松陽と銀時達しか無いなんて口が裂けても言えない。



だけどそれでも——……


やはり私の始まりはここなのだと。彼等なのだと今なら言えると思う。


そう、結局私はずっと、彼等と再び並び立つ日を心の何処かで追い求めていたんだ。




あまりに大きな遠回りの末に辿り着いた懐かしい景色。


私の視界はいつの間にか潤み、滲んでいた。


 

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ギラッフェ(プロフ) - 陽-hisa-さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。何よりもの励みになっています!今後とも楽しんでいただけると嬉しいです(^^) (9月2日 0時) (レス) id: 7a3023c2c7 (このIDを非表示/違反報告)
陽-hisa- - お久しぶりです。攘夷とこんなに上手く絡ませている作品、やはり私的にはこの作品が一番です。一番好きです。これからも楽しみにしています。応援しています。 (8月31日 19時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - るぅさん» いつもありがとうございます!ベタ褒めしていただいて嬉しい限りです笑 今後ともよろしくお願いします! (8月22日 9時) (レス) id: 1bbdb8d99e (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - いつも読ませて頂いてます!大体どの作品も恋愛系の作品が多いのですが、占ツクで面白い作品に出会えると思ってなかったです笑コメント見させて頂きましたが、オチなしの結末を考えているとの事で個人的にホッとしました笑これからも応援してます! (8月21日 21時) (レス) @page48 id: 0469468a88 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございます!読み返してくださるのとても嬉しいです!今後ともよろしくお願いします! (8月10日 9時) (レス) id: da4440489d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2022年1月26日 0時

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