ep327 ページ30
無惨にも粉砕されたインカムが目に浮かぶ。
「ふざけんな、あれ高いのに!」
「そこですか!?」
叫んだ私にすかさず入るツッコミ。そうそう、これこれ。さすが真選組、テンポいいね!
なんて思っている場合ではなくて…
実はあのインカムが斬り捨てられたのは割とまずい誤算なのだ。
あれは通信だけでなくGPS機能も果たす優れもの。この鬱蒼としていて敵も味方もわからない島の中で唯一、佐々木局長の所在を知るための手段だったのだ。
万が一、彼が重傷を負ってここを離脱できなくなった場合に備えて渡しておいたのに
それを捨てたということは……
もし自分が離脱できなくなっても見捨てろ——
そういうことか。
思わず舌打ちをした時、
《黒縄島に展開する全部隊に伝える。直ちにこの戦場から離脱しなさい》
トランシーバーから信女ちゃんの指令が入る。
その内容に思わず立ち止まった。
《上空部隊は地上部隊の退却の援護。これを収容して離脱を》
《し、しかし長官は敵を殲滅するまで戦えと……》
戸惑う隊士達に彼女は続けた。
《長官はたぶん、もう戻ってこない。ここからは生き残ることだけを考えて。たとえ見廻組がなくなっても……》
その物言いに“何か”が起きたのだろうと察しがつく。それもよりによってあの彼女が独断で離脱を命じるほどの“何か”。
《お待ちなさい信女さん、一体何があったんです?信女さ——》
そう尋ねた佐々木局長のトランシーバーは途中から音信不通になる。
当然だ。奈落と斬り合ってる時に通信してる暇なんかあるわけない。
「信女ちゃん、そっちの状況を説明して」
そう尋ねるも彼女の応答は無く、代わりに聞こえるのは
《信女!しっかりするアル!信女!!》
神楽ちゃんが彼女を呼ぶ必死な声。
息も絶え絶えの信女ちゃんは言った。
《早く、行って……。じゃないと…来る……国の命さえさらう本物の
疑問に思った瞬間、どこか馴染みのある声がトランシーバーから聞こえた。
《骸…一度ならず二度も主を裏切りますか》
知ってる、この声——
あと少しでその正体が分かりそうだった次の瞬間、メキ…と音がして通信が切れた。
黙ったままトランシーバーを見つめ続ける私に隊士が尋ねる。
「何か問題でも?」
「……うん。だけど私達は先を急ぐしかなさそうだ。行こう」
結局あの声の主は分からないまま、私は再び走り出した。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時