【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 漆

ep323 ページ26

じりじりと距離を詰める見廻組との間に緊張感伴う静寂が広がったその時、

ドサリと音がして運ばれて来たのは、血に汚れた松平。
目を瞑ったまま動かず、力なく地に伏すだけのその姿を見て、近藤は思わず刀を手放す。


佐々木は戦意を失った近藤の背後で、ゆっくりと銃口を構えた。



その一部始終を見ていたAは倒れた松平とその周りの隊士を交互に見る。

そして唇を少し釣り上げ、「あれまぁ……」と呟いた次の瞬間——





ザンッ————……！



周りを取り囲んでいた見廻組が一気に斬り伏せられ




「真選組だァァァアアア！！！」


鋭い雄叫びと共に現れた土方が高く飛び上がり、佐々木に刀を振り下ろした。


ガキィーン——……！



咄嗟にそれを阻んだ佐々木はすぐさま銃を構えるが、飛んできた斎藤の刀に弾き飛ばされ、ゴトリと地に落ちる。


「佐々木、お前も大概だが本物の長官の悪党っぷりなめんなァ！！」


立ち上がった松平の清々しい台詞を聞きながら佐々木は思わず舌打ちをした。


真選組が見廻組に扮し、松平の捕縛を装って懐深くまで入り込んだ——その事実は実際にかなりの痛手だったからだ。


しかも——……



「思ったより駆けつけるのが早かったですね」

飄々と自分の腕時計を確かめながらそう言うこの参謀は、見廻組に扮した真選組の隊士に気付いていただろうに何の忠告もしなかったのだ。


挙げ句の果てに自分だけ「あれまぁ……」などと言って土方が斬りかかる前に安全地へ避難していたという始末。


「あの扮装作戦、そもそもは貴女の入れ知恵でしょう」

「それに関してはすみませんとしか言いようがないですね」


白服と白服が斬り合う、どこか見覚えのある様子を遠目に眺めながら言うA。
しかし、不意に佐々木に視線を戻したかと思うと腕を組みながら溜息をついた。


「でも佐々木局長、この手で真選組にやられるの、なにも初めてじゃないですよね？
同じ手に何度もかかるのはやめましょうよ、聡明な貴方らしくもない」


わざと神経を逆撫でする物言いに、思わず力づくで土方を押しのけた佐々木。

その会話を聞いていた土方は


「橘、テメェなんでここにいやがる」


眼は佐々木に向けたまま問うた。


「さっき近藤局長にも同じこと聞かれましたね」

「答えろ。理由によっちゃあテメェも斬る」


Aは肌にピリピリと刺さる真選組の敵意と疑念の視線を感じながら、深く息を吸って言った。



「私が見廻組の参謀だからです」



　

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