【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 漆

ep324 ページ27

—貴女side—


「聞くまでもなかったんじゃないですか？頭のどこかで分かってた筈ですよね」


肩をすくめてそう言いながら私は真っ直ぐと副長を見つめる。

その視線を同じように真っ直ぐと見つめ返した副長は不意に笑い、近藤局長を背に庇って言った。


「そうだな。テメェが敵だろうが何だろうが関係ねぇ——。俺達の大将、返してもらうぜ」


「そう言うと思ってました」


それを聞いて自然と微笑みが漏れる。



その目の前で近藤局長やヅラを庇うように取り囲み、刀を構える真選組の隊士達。


「待たせちまったな近藤さん。散々悩んだ挙句、結局真選組(ここ)に戻ってきちまった」


「そうか……。このザマじゃお互い真の道はまだ遠そうだな」


「ああ違いねぇや。だが一つ分かったよ……。
俺達ぁアンタの隣歩けるならどこだって構ぇやしねんだってな」


その通りだと言わんばかりに真選組の隊士達が不意に頰を緩ませた。



「……そうか、ならば共にいこう。俺と共に生き、俺と共に死ね真選組！」




その声とともに一気に真選組が駆け出し、見廻組との斬り合いが始まる。


鼓膜を裂くような刀と刀のぶつかる音、噴き出す赤い血、あちこちから聞こえる呻き声。


私はそれら全てをつぶさに観察するよう、腕を組み凝視する。


「そこをどけ佐々木！」

「……どくと思いますか？」



すると熾烈な真剣勝負を交わす副長と佐々木局長の会話が耳に入ってきた。


「夢の続きが見たいなら押し通りなさい。たとえそのために他人の夢を踏み潰すことになろうとも！」



佐々木局長の言葉に私は不意に目を伏せる。


夢、ね……

随分と綺麗であやふやな言葉を選ぶもんだ。




いや、寧ろこの戦いを言い表すにはそれが相応しいのか？



私は腕を組み直して思い返した。



佐々木局長がこの戦いを謀った理由は、この後起こるだろう反乱——つまり倒幕の波をより大きくするため。
そしてその波がこの国を倒すに足るよう、天導衆の力を削ぐため。



彼は口にこそしないものの、妻子を失ったあの時からこの瞬間までずっとそのためだけに生きてきたんだろう。

長い時間をかけて駒と協力者を集め、綿密に計画を立てて……。


だけどきっとその本当のきっかけも動機も、誰かに明かすことは出来なかった。
一部始終を知る今井信女以外には……。


正直、その唯一の存在である彼女に寄りかかる術すら、きっと彼は知らないけれど。



　

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