ep316 ページ19
その頃、獄中では————
「俺が合図したらその丸薬を飲め。仮死状態で番兵を騙し、牢獄の門を開けさせるのだ」
桂によって投げ入れられた怪しげな丸薬を近藤は意味もわからず眺めていた。
未だに同じ牢に桂がいることさえ飲み込めていないのにも関わらず、当の桂はサラサラと話を続けていく。
「案ずるな、俺にとって牢獄とは近所の定食屋に過ぎん。そう、言ってしまえば俺のやることは——」
「いやいや待て待て待て!!お前まさか俺を脱獄させるためにわざわざ捕まったってのか!?」
その問いに余裕綽々といった様子で鼻を鳴らした桂。
「どういうつもりか知らんが騒ぎを大きくしてくれるな!!トシ達に迷惑がかかる!!」
「それについても心配はない。今頃お前の仲間達もエリザベス達と合流して脱獄の算段を整えているはずだ」
その言葉に近藤は耳を疑わざるを得ない。
「合流ってなんだ!?」
目を丸くする近藤に、桂は桂派と真選組が結託してこの牢獄を襲撃する計画をつらつらと語り聞かせる。
それを聞いて一気に冷や汗が噴き出した近藤。
互いの大将を取り戻すため、敵同士が手を結ぶとなればどちらも元の場所には戻れない。
いや、そんなことでは済まないだろう。国に喧嘩を売るのだ。塵ひとつ残らないほど殲滅されるに決まっている。
「そんなマネをすればみんな死ぬぞ!トシ達もお前の仲間達も無駄死にすることになる!」
「誰も死にはせんさ」
だが焦る近藤と対極に、桂は至って落ち着いていた。
「何故なら俺は知っている。今まで俺達を散々苦しめてきた真選組の手強さを。
近藤お前も知ってるはずだ。今まで散々真選組の手を焼かせてきた攘夷志士達のしぶとさを」
近藤は思わず息を呑んだ。
桂は決して面白半分にこの計画に首を突っ込んだのではない。確信満ちた眼差しがそう語っていた。
「近藤、俺達は立場は違えど、国のために戦わんとする思いは同じだ」
その時、また別の牢から声がした。
「やれやれ、前に同じこと言ってる奴がいたよ」
「とっつぁん……」
一部始終を聞いていた松平片栗虎が立ち上がる。
「天下の将軍様と天下の悪党が同じ戯言並べるなんざ、一体どっちがイカれてんだか……」
「そのイカれた将軍と約束した」
そう聞いて少し、息を吸い込んだ松平は意を決し
「俺にもその丸薬よこしな」
「と、とっつぁん!?」
「イカれた将軍の仇はイカれなきゃとれねぇよ」
吐き捨てるようにそう言った。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時