ep309 ページ12
近藤局長と松平長官の捕縛後、彼等の処刑が5日後に迫った今日。
「……動かないですなぁ」
私は執務室のソファーに寝転びながらあくび混じりに呟いた。
「真選組ですか」
「えぇ、驚くくらい動きませんよ。こっちは毎日必死で情報を集めて動向探ってるっていうのに」
副長はすっかり街の岡っ引きさんに落ち着いてしまっているし、沖田君は配属を呑まなかったものの、かといってドンパチ起こそうとしている様子もない。
「貴女の言ってた“発破”が必要なのでは?」
「ですねぇ、正直乗り気じゃないんですけどやりますかぁ」
ひょいと起き上がってパソコンから地図を印刷する。
「ここに行って程々に荒らして来て下さい」
「……スナックですか?」
地図を見ても意図の読めなかったらしい佐々木局長が首を傾げた。
「そこで志村妙が働いてるんですよ。彼女は志村新八の姉であり近藤局長の想い人……万事屋と真選組の両方に喧嘩を売るには十分では?」
「とは言っても闇営業でもない店を見廻組主導で“荒らす”というのは無理がありますよ」
「じゃあ連れて行けばいいじゃないですか、荒らしてくれそうな人を」
その言葉であり得ないものでも見るような眼で見られる私。
雇われてからというものの、全てお見通しなようで案外私の突飛な立案に驚きを隠さないこの人が面白くなってきている。
「ほら、いるじゃないですか。国のてっぺんにふんぞり返って。でもなんか物足りなくて暴れたがってるお方が」
「程々に荒らす、じゃ済まなくなるかもしれませんよ」
まあ確かに。今の将軍様はそれはそれは血気盛んというかガキというか……
ちょっと気に食わなかったら敵味方関係なく首を落としそうな分別もつかない輩ではあるが。
「だからこその見廻組なんですから一緒に行って手綱引いといて下さいよ」
「……そもそもあの方に手綱が存在しているのかどうかも怪しいですがね」
言えてる。
「怪我ぐらいならいいですよ。ただ死なせるのは無しです。佐々木局長が上手く収めて下さい」
「万一、死人が出たら……」
「その時は私は参謀の仕事を降ります」
そうサラリと言ってのければ、みるみる眉間に皺を寄せていく局長。
「……嫌ですねぇ、その困るでしょう?と言わんばかりの顔」
「すみませんねぇ、元々こういう顔でして」
悪態を悪態で打ち返し、ニヤリと笑う。
そうすれば潔く諦めた局長が「分かりましたよ」と溜息を吐いた。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時