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ep331 ページ34

「2時の方向から3人接近!」


木々の間を走り抜ける白黒の集団から鋭い声が響く。


「次3時方向から2人!副長、正面に見えてるのは私がやるのでそっちお願いします」

次々と迫る敵の人数と方角を言い当て、斬り捨てていくAに隊士達は走りながらも目を丸くしていた。


「橘、てめぇその刀は飾りじゃなかったのか?」


鮮やかなその太刀筋に思わず苦笑をもらした土方が問えば


「飾り??副長には私がそんなアホに見えます?」

思いっきり眉を顰めて返す。

たしかにそうだ。刀を身につけていれば嫌でも目立つ。そしてそれが女となれば余計な火種を吹っかけられるのは明らかだった。


「だが隠すことはなかっただろ」


ふと土方は不思議に思って言った。
これほどの腕前があればAが1人で片付けられることも多かっただろうに、彼女は今まで一度もそうしてこなかったのだ。

テツの件で見廻組と対立した時も、江戸城に潜入して牢屋に入れられた時も、伊賀での一件だってそうだ。


自分で刀を振るえば解決した場面が思い返せばいくつもある。なのに彼女はわざわざ真選組や万事屋の力を借りて、決して自分の刀は抜かなかった。

土方にはそれが隠しているようにしか思えなかったが、Aは笑ってそれを否定する。


「隠してたつもりもありませんし、買い被りすぎです。私の太刀筋なんて大したことないですよ、この眼のお陰でちょっと他の人より速いだけです」


そして彼女は「それに……」と続けて言う。


「参謀は思考し指示を出し統制する立場です。刀を握って前線に立つとそれが鈍ることもあるんですよ……」


……そういう経験があったんだろうか…?

言葉尻に漂った自嘲したような雰囲気が気になって、土方はAをチラリと盗み見る。


刀を握り、前を見据えたままの彼女は、今までもさんざん見てきたあの顔をしていた。

今を見ているようでいて、ずっと昔のことを振り返っているような掴みどころのない表情を——。



だが正直、その話だって真偽は怪しい。
実際、彼女はいま刀を握りながらも接近する敵の動向を全て読み、味方に的確な指示を出しているのだから……。

それのどこを見たら判断が鈍っていると言うのか?



しかしもう一度見てみた彼女の表情は相変わらずの“あの表情”だった。




 

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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時

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