ep301 ページ4
「先程、身柄を拘束したと連絡がありました。貴女の予想通り、その場に白夜叉の彼も居たそうですよ」
「そうですかそれは良かったです。じゃあ後は松平長官ですか」
「“元”長官ですがね」
「……。失礼しました、つい癖で」
そう謝り、佐々木局長の机に置かれた手配書をぴらりと返して目を通す。
前将軍を死なせた罪で松平片栗虎と近藤勲は斬首。真選組は解散。
まだ公には出されていない罪状。
とは言え、松平長官は今日わざわざ江戸城に招かれる本当の理由を理解してるはずだ。
既に警察庁の長官は佐々木局長と正式決定しているし、席を追われた元権力者が辿る道なんて何千年も前から同じだ。
無意識のうちにそんな感情が顔に出ていたのか、あるいはそんなことは想定内なのか、佐々木局長が私に問う。
「そんなに不安でしたら貴女も江戸城に同行しますか?」
モノクルの奥で鋭く光る眼差し。
そんな疑わなくたっていいじゃないか。こっちだって退っ引きならない理由で雇われてんだから。
「まさか。私が関わっていることはギリギリまで内緒ですよ」
真選組の彼等や松平長官……そしてこれから巻き込まれる筈の万事屋だって察しが悪いわけじゃない。
私が関わっていると彼等が知ることが吉と出るか凶と出るかなんて分からない。
いや、むしろ「参謀が何とかしてくれる」だの「きっと自分達を助けるために見廻組に潜入してくれてる」だの希望的観測を抱きかねない。
「実際、さっきから真選組と銀時からの電話が止まなくて」
ポケットの中で震えていた携帯を出して机の上に乱雑に放り出す。
「困りますよね、こんな時にまで泣きつかれても。こちとらもう新しい雇い主に忠誠誓ってるのに」
「忠誠、ですか……」
「嫌だなそんな眼で見ないで下さいよ。彼等に情報流したりもしませんし、協力する気もありません」
私は別に“真選組や松平長官を助けたい”わけじゃない。
「今回の計画、盤上の全ての駒に頑張って貰わないと困りますからね。特に近藤局長と松平長官には……それこそ文字通り死ぬ気になって貰わないと」
手配書をひらりと佐々木局長に手渡す。
「ということで私は大人しくお留守番としましょう。その間に隊士の皆さんと親睦でも深めときますよ」
私の言葉に「そうですか」とだけ言って佐々木局長は執務室を出て行った。
一人になった部屋の中で未だに震え続ける携帯。
私はそれを手に取って――――電源を切った。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時