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ep292 ページ45

―土方 side―



旋風と共に離陸した船を見上げ、上様の門出を見送ったその日。

俺達には達成感と虚無感の入り混じった感情が残った。

上様の命を護ったはいいが、江戸での居場所は護り切れなかった。そういう虚無感。



俺達より少し先にいる参謀も同じような眼をしてゴマ粒ほどの大きさになった船を見上げて続けていた。



「……行くか」


近藤さんがそう言ったのを皮切りにダラダラと見送りの群れが散っていく。


黙っていたら一向に動きそうにない様子を見て軽く肩を叩けば、ゆっくりと振り返る参謀。



「ひっでぇクマだな」

「御所の手配に協力者のリストアップ、今後の流れとか色々まとめてて……気づいたら外が明るかったんですよね」


遠い眼をしてそう言うコイツはきっとあれから一睡もしてないんだろう。



「と言うか副長こそ身体、大丈夫ですか?昨晩は無茶させちゃったから」

「昨晩って何だアホ。語弊しかねぇ言い方やめろ」


隣でくすくす笑う姿に溜息をつけば、風が吹いて血生臭い匂いが広がる。


ふと顔を上げれば、翻ったコイツの外套に赤黒いシミが広がっていた。
まぁ外套とは名ばかりで裾は手荒く引き裂かれているんだが



「……おめぇは大丈夫なのか?」


その問いにまるで心当たりが無さそうに瞬きを繰り返す。

……コイツ、よっぽど寝不足で頭回ってねぇんだな。


しばらくして俺の視線を追って自分の外套に眼を落とした橘。



「あぁ……これ、私の血じゃないんで」


そう言いながら眉尻を下げて唇を少し噛んだ。


苦々しい、悔しい

そういうもの通り越して、もはや泣きそうな表情をしていることに本人はきっと自覚がないんだろう。


放っておけばそのうち本当に泣き出しそうな気がして「おめぇの処罰についてだが」と話を逸らした。


「とっつぁんから話は引き継いだ。取り敢えず屯所に戻るぞ」

「……はい」



 



そう言って乗り込んだ車内で


「で、私の処罰って何に決まったんですか?」


橘はまるで他人事のように聞いてきた。


「Aさん推測は得意じゃねェですかィ、当ててみて下せェ」


言うかどうか迷ってる内に助手席の総悟がけしかける。


「えー、これでも脳味噌疲労困憊モードなんだけどなぁ」

「将軍様放り出すなんてけったいなこと思いつく参謀様ならそれくらい朝飯前でしょうよォ」

「刺々しいなぁ」


と笑っていた橘は「うーん」と考えていたかと思えば、気づいた頃には小さな寝息を立てていた。



 
 

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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時

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