ep272 ページ25
凍えるように寒い日だったのを覚えている。
とうに日は沈み、むしろ日の出の方が近いような仄暗い刻。
辺りに人はおらず、ただ時折乾いた風が勢いよく吹き荒ぶ――……
そんな道を、私は気休め程度の羽織一枚を必死に手繰り寄せながらゆらりゆらりと歩いていた。
冷たい風が吹く度立ち止まっては、地面にうずくまってそれをやり過ごし、また歩く――。
それを繰り返しながら、身体の節々に氷柱でも差し込まれたかのような寒さに震えた。
なのに何故だか、両の眼だけは燃えるように熱く、じくじくと鈍い痛みを放っていたのを覚えている。
幼い頃こそ何故自分がそんな格好であそこを彷徨っていたのか分からなかったが、いま思えばそのじくじくと痛む眼が原因だったのだろうと察しがつく。
私に奇妙な眼を植え付けた輩から逃げてきたのか、あるいは私の眼を何かと利用していた輩から逃げてきたのか……。
幼い頃の記憶なんて朧げで何一つはっきり覚えてはいないが、どうせそんなような理由だろう。
自分がどこから来たのかもわからなければ、ここがどこで、どこへ向かえばいいのかもわからない。
そんな中、気力も体力も尽きた幼い私は小さな凹凸につまずいて、ドサリと地面に倒れ込んだ。
最早起き上がるような力も無く、ただ茫然と東の空が徐々に明るくなっていくのを眺めていた。
それからどれほど時間が経ったのだろうか……
「おい、お前……おいっ!」
力の抜けた肩がゆさゆさと乱雑に揺すられている感覚でうっすら意識を取り戻した私は
「大丈夫か?」
霞んだ視界に、朝の光を照り返す紫色の髪をぼんやりと捉えた。
――これのどこか大丈夫そうに見えるんだ……
心の底でそう思いつつも、その的外れな問いに何か言い返す力も最早無く、私の意識はそこで途絶えた。
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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時