ep265 ページ18
「A君……」
俯きながら肩を震わせていれば、局長が優しく私の名を呼ぶ。
拳に力を入れて顔を上げれば、ふっと笑って見せる局長。
「俺達は侍だ。将軍様を守る――そのためにここへ来た。君の作戦が理由じゃない」
いつも通り優しい笑みを浮かべる彼に嫌気しか差さない。
……違う、そういうことじゃない。
なんも分かってない……。
局長と副長は自分達が真選組にとってどれほど大切な、かけがえのない存在なのか……まったく分かってない。
「A君が責任を感じることは無いさ」
……なんの責任だよ。
眉をひそめた私にも構わず、副長は局長の言葉に続く。
「それが俺達の誇りなんだよ」
……違う。
「ずっと近くで見てきたんだ……テメェも知ってんだろ」
……違う。
「俺達はテメェに言われたから剣を握るんじゃねぇ。自分の誇りのために剣を握るんだ」
違う。
「違う――……違う、違う違う違うッ!!」
火蓋を切ったように流れ出す言葉。
私が言いたいのはそんなことじゃない。
私が2人に言って欲しいのはそんなことじゃない。
「守る前から死ぬつもりの奴に守れるものなんか無いって言ってんだよ!!」
守ろうとしたものを守りきれなくて失うのと、はじめから捨ててもいいと思って失うのは全然違う。
「黙って聞いてれば、後は任せるだの誇りだの。アンタらは『誇り』って言葉を盾にしてるだけだ!!
実際言ってることは自分は死んでもいい、どうせ死ぬから後はよろしく――そういうことだろ!?」
橋の向こう側で、局長と副長の目が見開かれるのが見える。
「ふざけんなよッ!!いつからそんな腑抜けになった!?
帰れないかもしれない?ンな半端な覚悟で剣なんか握んなよ!!残るって言うなら絶対に帰るってそう誓えよッ!!」
私はありったけの力で叫ぶ。
「アンタ達はこんなことじゃ死なない!私が絶対に死なせないッ!!!」
ゼェゼェと息を切らせながら見れば、2人は頬でも打たれたかのような表情をしていた。
「分かったらさっきのふざけた遺言紛いの台詞、撤回してくださいよ!……このままじゃ――…」
……このままじゃ――――
「置いていけるわけないじゃないですか!背中預けられるわけないじゃないですか……
信じて帰りを待っていられるわけ、ないじゃないですか……っ…」
そう言い終えない内に自分の涙腺が熱くなるのを感じた。
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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時