検索窓
今日:22 hit、昨日:69 hit、合計:376,999 hit

ep276 ページ29

それからいつの間にか松下村塾の生徒となった私。


どうせ行くあてもないから、と松陽の元に居候することになって1ヶ月少々経った頃。


「はぁ!?お前が――」

「は!?てめぇが――」


今日も今日とてつまらない内容で取っ組み合いを始めた銀時と晋助を眺めながら縁側に腰掛ける。

濃いめの茶を飲みながらぼーっとしていると、しばらくして松陽が現れた。


いつも通りの笑みで2人のいさかいを見守るその姿に


「止めれば?」

と言えば

「もう少し後にしましょう。今止めても解決しそうにないですから」


そう返ってきた。



風が柔らかく吹く中、視界の大部分を覆ってはゆさゆさ揺れる前髪にそろそろ嫌気を感じていた私。

それを見た松陽が


「そろそろ切りませんか?その前髪」


と言ってどこからか出してきたハサミをちょきちょき動かして見せる。

最近そればかりだ。松陽の無邪気な表情に呆れて尋ねる。


「……なんでそんな切りたいの?」


「目は口ほどに物を言うとよく言うじゃないですか。Aが何を考えているのか、もっとよく知りたいんですよ」


「それはそっちの都合でしょ」

茶を飲みながらそう返せば


「確かにそれもそうですね。ではAの都合も聞きましょう。なぜ前髪を切りたくないんですか?」


その問いに内心、波立つ。




「……答えたところでどうにもならないから」



これ以上踏み入られまいと、そう突き放したのが悪かったのか

あるいは不意に俯いたのが悪かったのか――



「そんなことありませんよ。ここは塀に囲まれていますし……」


その答えが呼び水となって私は次の瞬間、凍りつく羽目になる。






「“視え過ぎる”ことはありませんから」




その言葉と共に掌から湯呑みが滑り落ち、地面に落ちて砕け散る。

熱い茶がかかったがそんな熱さも痛みも、その衝撃の前では微塵も感じなかった。



“視え過ぎる”――――


そんな言い方をするのは私の眼のことを知っているからだ。


なぜバレた……

いつバレた……


ここに来てからは一度も使ってない。




なら……




――……はじめから知っていた……?




その結論に達した時、私が感じたのは首でも絞められているような息苦しさと恐怖だった。




 

ep277→←ep275



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (624 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1082人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 原作沿い , 真選組
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。