ep161 ページ14
3人のピリピリとした空気の中で切り終えた林檎を頬張る。
「それ、私のなんですけど」
じとりとこちらを見た佐々木局長に
「えぇ、知ってます」と返す。
「功労賞ってことでこれくらい貰ってもいいじゃないですか」
まだ蜜柑も梨も、メロンだって残ってるのだから……と思いながらシャクシャクしていれば副長と目が合う。
…………ん……?
「…………食べます?」
「ちっげぇよ!!今のは林檎食べてぇ、の眼じゃなくてなに一人でくつろいでんだコノヤローの眼だ!!」
「わーかってますって。それくらいのことでキレないで下さいよ」なんて笑って流そうとしたその時
「本当にその通りですね。貴方がた……こんな所にいていいんですか?」
佐々木局長の鋭い視線が私達を貫いた。
「部下から連絡がありましてね……カラスの死骸が消えました。定々公を見張っていた方がいいと思いますが?」
私はその瞬間、弾かれたように立ち上がった。
同じ思考に至ったであろう局長と副長と共に、挨拶もそこそこに病室を去った。
パトカーに乗り込んでサイレンを回す。
「副長、飛ばして下さい。できるだけ」
「言われねぇでも分かってる……!」
急発進した車内で早まる鼓動を収めようとした。
……迂闊だった。いくら銀時相手と言えどもあの袈裟の男が手負い相手に息絶える筈もなかったんだ。
ほとぼりが冷めてから定々を掻っ攫う。誰にでも思いつきそうなそれを何故失念していた……。
思わず眉をしかめ、髪をかきあげて目を覆った。
「着いたぞ」
私達は荒々しく戸を閉めると直ぐに牢へと走った。
重い戸を開け放った先の牢には――――
血を流して地に伏した定々が転がっていた。
茫然と目を見開く二人の横を通り抜けて牢の鉄格子に手を掛けた。
天導衆か……?
いや違う。あいつらはボロボロの定々すら連れ帰ろうとした可愛がりぶり……今更切り捨てるとは考えにくい。
ならば、誰だ……。
わざわざ城中に忍び込むという危険を冒してでも徳川定々を殺したいと思う者――
誰、誰……誰だ……
「――っ……!」
その時、まるで脳に電流でも走ったかのように息を呑んだ。
…………
いや、正確に言うならば……私達、だ。
松陽を奪われた憎悪――。
『松陽の弟子達』以上に徳川定々個人を恨んでいる人間は居ない。
「…………晋助……」
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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時