ep189 ページ42
退散していった鬼兵隊を見送りながら、やれやれと息を吐く。
「遅いじゃないかぁ黒子野君。待ちくたびれちゃったよ」
「面白くなる予定だからギリギリまで出てくるなと言ったのは貴女じゃないですか……橘参謀」
私の縄を切りつつ、呆れたように答える彼こそ……そう、かの黒子野太助である。
……というか
「もう君の参謀じゃないんだからその呼び方なし」
「そういう変に細かいところ、変わりませんね」
「君のその微妙に空気読んでくれないところも相変わらずだね」
やっぱり本人を前にすると懐かしさを感じるものだ。
攘夷時代、彼の影の薄さは参謀として重宝していたし、隠密活動も任せたこともある。
こんな風に小言を言い合ったこともあったっけなぁ……?
「そもそも何故、僕の今の連絡先がわかったんですか?」
そういえば、と思いついたように尋ねた彼に「今の仕事のコネでね」と答える。
言ってしまえば勿論、長官のお力を借りたわけだがそれは内密。
「ま、そうでもしなきゃ銀時の醜態拝めなかったから良しとしよう」
立ち上がってぐいっと伸びをしていた時だった。「ところで――」と黒子野君が私の方を振り返って尋ねた。
「橘さんは僕のこと覚えていたんですよね?何故、覚えていないふりをしてこんな茶番を?」
「言ったじゃん、銀時の醜態を見たかったからだよ。それだけ。以上!」
実を言えば黒子野君のことを思い出したのは顔を洗いに席を外したあの時だ。
そして武市さんの存在とそれが繋がり、同窓会の正体に気づいたわけだったが……
「違います。僕は貴女がわざわざ鬼兵隊の前に現れた理由を聞いているんです」
私は思わず言葉に詰まった。
「銀時さんの醜態なら彼等の前に現れずとも拝めたはずです。なのに何故、わざわざ彼等に接近したんですか?」
「相変わらず鋭いね、可愛くないな黒子野君」
そう言いつつも諦めそうにない彼の表情を見て、私は仕方なく閉ざしていた口を開くことにした。
「気になったんだよ。晋助の今の仲間がどんな人達なのか……“今の鬼兵隊”がどんなものなのか。実際に見てみたかった」
「実際に見てみて、どうでした?」
それを言わせるか、とちょっと不機嫌な面で彼を見たが、そこにあったのは懐かしい笑顔だった。
毒気を抜かれたような気分になって私は諦めて答えた。
「似てたよ……私の知ってる“昔の鬼兵隊”に」
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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時