ep112 ページ15
私が漏らした笑みを不審げな目で見るテツ。そして俯いて続けた。
「それに……橘参謀が剣術の鍛錬をしているところも見たことが無いですし……」
私が刀を持っていることは今や隊士達の知るところだ。でも確かに道場で鍛錬したことは無いから不思議に思われるのも当然だ。
「街で人目も引きますし、お飾りなら外した方が……。持っている方が却って危険ですよ……」
確かにそうかもしれない。どうせ浪士が斬りかかって来たところで使う気は毛頭無いわけで。
ふとヅラの部下と鉢合わせて大根で撃退した時のことを思い出した。
でも――……
「でも……外すわけにはいかないんだ。
……私には絶対叩っ斬らないといけない奴がいてね。いつ何時、そいつに会うか分からないから……」
テツは私の言葉にじっと黙っていたかと思うと
「……すみません。踏み入ったことを聞いてしまって」
すまなそうに、しかし私の雇われた理由には納得していない様子で謝った。そんなテツに「いやいや、君が気にすることじゃないよ」と笑う。
「それにほら、雇われた立場の私に雇われた理由を聞かれてもね?
気になるなら、雇い主の局長に聞いてみたら」
一片の不機嫌も匂わせない私に少し目をパチクリさせたテツは「……ぁぁ……は、はい」と歯切れの悪い返事を返した。
そこにテツの携帯が鳴る。
「副長のお手伝い?」
「あ、はい」
副長は素直じゃないね。何だかんだ言いつつ、テツのこと気に入ってるじゃん。
「じゃ、頑張ってね」
ひらひらと手を振って私はまた自室に戻った。
隊士達からは少し離れた場所にある自室の戸を開けて中の様子を眺める。
乱雑に広げられた地図と書類作成中のパソコン、山積みにされた参考資料の数々。
そしてその傍らに置かれた愛刀――。
私はそれらをただ漫然と眺めながらふと呟いた。
「雇われた理由、ね……」
局長に聞けば、とは言ったもののおそらく彼は松平長官に丸め込まれただけだろう。
そして正式な雇用主である長官が私を雇った理由は単純に将軍を護りたい、ただそれだけだ。
そして私がそれを承諾した理由は――……
……いや、そんなこと思い出しても意味ないか。
どうせ誰かに言うつもりなんて毛頭無いんだから。
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ギラッフェ(プロフ) - AISさん» コメントありがとうございます!心臓刺激できたようでよかったです笑 これからも宜しくお願いします! (2021年3月24日 23時) (レス) id: d3f370a12a (このIDを非表示/違反報告)
AIS(プロフ) - 橘ちゃんのキャラと能力がどストライク過ぎました。(真顔ゲンドウポーズ)銀さん「ったく、もうちったぁ俺の相手しろよ……。薄情なやつだな」AIS「おっ?君ツンデレか??ならば良し」。ワタクシの心臓を刺激しましたねハイ。更新頑張ってください!応援してます! (2021年3月22日 0時) (レス) id: 2a56ff43b4 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - なまたまごさん» 尊敬だなんでとんでもないです!ただたた銀魂が好きなだけです笑 なまたまごさんもがんばって下さい! (2019年6月24日 20時) (レス) id: ea51419cd6 (このIDを非表示/違反報告)
なまたまご(プロフ) - すごく面白いです…!同じ作者として尊敬します。これからも頑張ってください!! (2019年6月24日 0時) (レス) id: b5ac9a2789 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Nightさん» 応援ありがとうございます!!ぜひぜひ楽しみにしてて下さると嬉しいです。がんばります!! (2019年6月23日 11時) (レス) id: ea51419cd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年4月19日 7時