【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 参

ep111 ページ14

長い長い説教の後、ぶらりぶらりと廊下を歩くテツと私。
まぁ、正しくは私は説教されてテツは指南されたわけなんだけどね。

副長いわく――……

「いいか？橘は悪徳商人を煎じて濃くしたような奴だ。こいつが悪い顔してる時は逃げる一択だ。わかったか！？」


だそうです。


傷付くわー。悪徳商人を煎じて濃くしたような奴ってどんなよ？ナイスネーミングセンスなのは認めるけどさ……。


「てか……ダメじゃないかテツ君。君が口を割らなければ副長は沖田君を犯人だと思い込んでめでたしめでたしだったのに……」


「めでたしめでたしじゃねェでしょう」


ふと通りかかった沖田君の突っ込みが飛ぶ。「君にとってはね？」と笑ってかわせば、彼は盛大な溜息を吐いて「それに……」と続ける。



「Aさんは悪戯仕掛ける時に悪い顔なんかしねぇですからねェ」

「え……じゃあ自分はどうやって橘参謀から逃げればいいんですか！？」


「逃げられないという結論だね」


テツ君の肩に手を置きつつ、はははと笑えば「ちょ、た、助けて下さいよ沖田隊長！」と叫ぶテツ君。

だが残念なことに沖田君は既に居なくなっていて助けを求める人もいない。


というか助けてって何さ。路地裏で不良に絡まれた訳じゃあるまいし止めてよ。私、悪者みたいじゃん。
まったく……副長のせいで私の印象があらぬ方向へと曲げられている……。



「まぁまぁ、そんな警戒しないで仲良くしようよテツ君」

にこりと笑えば微妙な表情をしたテツ。
そしてその表情のまま私に問うた。


「……あの、ずっと気になってたんですけど橘参謀って普段どんな仕事してるんですか？」


「仕事？……最近はそんな大事件も無いしつまらない書類責務ばっかりかな」


なになに、藪から棒に？と聞けば少し言いにくそうに語り始めるテツ。



「橘参謀が悪いとは言いませんが……こういう男ばかりの組織に女性がいると……」


あぁ……と納得する私。
自分がこの組織で異分子なのは承知。真選組だから風紀が乱れるとかはないけれど、参謀が女ってことで攘夷浪士に舐められる可能性は認めざるを得ない。


「そのリスクに目をつぶってでもあなたを雇うことに意味はあるのかな……と」


そう尋ねると、とても居心地悪そうに私の答えを待つ。そんな顔するなら聞かなければいいのに。
まぁ、そこら辺の真っ直ぐで隠せないところが長所でもあるんだろうが。ますますテツは真選組向きだな。


そう思ってふと笑いが零れた。





　

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