【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 参

ep133 ページ36

―貴女side―


屯所に戻った私は広間のどんちゃん騒ぎを抜け出して縁側に腰を掛けていた。


「テツ、腹踊りしろよ腹踊り！！」

「は、腹踊り…！？」

「出来ねぇとは言わせねぇぞぉおおお！」

「……や、やらせていただくっす！！」



瞬間、「うぉぉおおお！」とあがる酔っ払いどもの歓声。

遅れたテツの歓迎会と称しつつ、宴会に近いその乗りに苦笑しつつ、私は携帯を出して通話のボタンを押した。


しばらくして出た電話先の相手はドスの効いた声で「もしもしィ」と気怠げに言う。


「お疲れ様です長官。橘です」

「おぉばなっちゃん。お疲れぃ」


私をばなっちゃんと呼ぶ電話の相手は――そう、松平長官だ。



「無事解決したみたいだなぁ？」

「はい。ご協力ありがとうございました」


「流石ばなっちゃん」と笑う長官に


「まぁ……ヘリの到着、長官が言ってた時間より5分も早かったですけどね」

と愚痴を漏らせば


「無理言うなァ。オジサンも綱渡りだったんだよぉ」


情けない声が返ってきた。

そう、“協力”とはこのこと。
見廻組がヘリを使うと見込んで長官にその離陸時間を密告してもらったのだ。


「長官とは言えど、見廻組のヘリの離陸時間を真選組に漏らすなんてギリギリアウトなんだからよォ」


「ちゃんと感謝してますよ？お陰で真選組は副長を除いてほぼ無傷ですから」


そう伝えながら、あー本題に入らないければとタイミングを探る。
いや勿論、報告の意味もあって電話をしたのだが、それ以上に――……と考えあぐねていれば



「……んで本題は何だ、ばなっちゃん」

長官に聞かれる。


「バレてましたか」

「何ならその本題の内容も大体見当がつくけどなァ。さぁ答え合わせといこうじゃねぇかァ」


それで私に言わせるのか……。
「まったく、人が悪い」とぼやきながら私は仕方なく言った。


「私を雇う時に言った例の報酬、ちょっと早めにもらえません？」


「『警察が持ってる橘Aについての情報全てを消去する』ってアレか？」


「はい」と私は短く答えた。


長官は伊東の一件で崩れかかった真選組を立て直す為に私を雇った。
私がそれに応じたのは警察組織、ひいては政府が持つ私の記録全てを揉み消すという条件と引き換えだった。


その報酬を前払いしてもらう理由とは一概に


「面倒臭い奴に目を付けられたなァ？」



そう、それだ。

愉快げに笑う長官に溜息を吐きつつ、私は肩を落とした。





　

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