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ep221 ページ9

乱歩は云う。


「彼女は凡て解った上で通信を繋げる選択肢を取ったんだ」


空間接続相手では彼女は自身の異能が遣えないに等しいと気付いていると。そして非戦闘員の自分が、古巣の《死の家の鼠》と対峙すればその時点で詰みなことは承知だったのだと。


「彼女はとうに覚悟を決めているんだ」


それを聞いて敦は俯いた。

確かにAは聡明だ。自分の置かれている状況を誰よりも理解しているし、其処に私情を混ぜて無駄な足掻きなどしないだろう。



「だけど……だけど、それが彼女の元に行かなくていい理由にはならない。これは情の問題です。
彼女が居なくとも世界は回る——それにせめて僕だけは違うと云いたい。……ごめんなさい、行きます」


そう云って踵を返すと足早にアンの部屋を出て行った。




「善いのですか乱歩さん……敦を向かわせて」と尋ねた国木田に名探偵は返す。



「……別に善いよ。どうせ店はもうもぬけの殻だ」


「彼女は一体何処に……」
 
「敢えて連れ去るなら敵の目的地は一つ——……ムルソーだ」






 
……






その頃。


耳障りの悪い回旋音と足元の浮遊感……


靄のかかったような意識を手繰り寄せ、慌てて目を開けたAは


「グッドモーニング!やっとお目覚めだね〜そして早速クイズ!!さぁて此処は何処でしょうか!?」


自分の直ぐ鼻先でにんまりと唇を吊り上げるシルクハットに不愉快な顔を隠しもしなかった。

未だに平衡感覚が狂っていてクイズどころではない彼女の頭には、彼の云ってる半分も入ってこない。


彼女が眉を顰めていることを知ってか知らずかゴーゴリは大腕を広げて云う。


「答えは簡単!そう!ムルソーに向かうヘリの中さ!!」

「……。朦朧としている頭に追い討ちが……」

と呟けば


「朦朧とするのは空間接続の影響だろう。私も最初はそうなったからな」


労わるような呆れたような声が鼓膜を揺らした。


Aは怪訝に思う。ゴーゴリは向かいの席にいる。ならば隣にいるのは——……?


未だ混乱の頭で横を見れば肩が触れ合うほどの距離にいたその声の主。

信じ難くてまじまじと見つめれば彼の淡い髪が頬に擦れた。




「…………シグマ……さん」



 

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ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» いつも作品愛を届けてくださりありがとうございます!原作ファンの一員としてなんとか良いストーリーを!と思っています笑 来たる年もぜひ宜しくお願いします! (12月31日 0時) (レス) id: 046a0c810f (このIDを非表示/違反報告)
うどん - 更新されるたびにいつもギラッフェさんにメッセージを送りたいほどギラッフェさんの作品を愛しています!!ギラッフェさんの作品はいつも作品に引き込まれるほどの素晴らしいストーリーだと思います!!原作の展開が予想できず大変だと思いますがこれからも応援しています! (12月28日 23時) (レス) id: b2d2242acf (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» 楽しんでいただけて何よりです!応援いただきありがとうございます! (12月11日 22時) (レス) id: 608d959404 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - ストーリーが繋がってきて、楽しいです!頑張ってください! (12月11日 19時) (レス) @page9 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» コメントありがとうございます!そう云っていただけるのが何より嬉しいです。是非是非今後ともよろしくお願いします! (11月24日 18時) (レス) id: 1ed6621db5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年11月14日 23時

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