ep228 ページ16
こうしてヘリを降りた後、体感数時間の海路と数回の空間接続を経て
「ハァーーイ、ムルソー到着〜!!」
場違いな程の明るい声と共に目隠しが外された。
瞬間、眼に飛び込んできたのは眩し過ぎる白塗りの壁と天井。
思わず目を細めた私は徐々にその明るさに慣らし乍ら辺りを見回した。
余りに整然、静閑とした空間。ふと此処が地の果ての牢獄であることを疑いそうになる——が、相違ない。
此処はムルソーだ。
ムルソーに不法侵入しているという事実の重さと空間接続の眩暈で思わず眉間に皺が寄る。目を閉じたところで軽快しそうにない眩暈に頭を悩ませていると
「大丈夫か……?」とシグマさんの声。
彼は至って彼らしく、私がまだ預けきりにしている手を離そうとはしない。
「……大丈夫です」
私から離せば、未だ窺うような視線が刺さる。それを知っていて私は何処か色のあるところを探して視線を逸らした。
平衡感覚の狂った状態に此の一面白壁は些か堪える。その挙句、連れもほぼ全身白と云って相違ない人達なのだから……。
仕方なくドアに書かれた赤字でも見つめていると————
パチンッ…
突如、指を鳴らしたゴーゴリ。
その小気味良い音と共に、天井に穴が開く。そして其処から——……
ドン、と鈍い音を立てて落ちてきた人影に身が凍り付く。
しかしそれを認知するより前に、ゴン、と再び同じような落下音。
「い"っ——!!」
久しぶりに鼓膜を鳴らしたその声に安堵する間も無く——
「ハハハーハ!箱抜け奇術大成功だ!!」
騒がしい道化師の声が響き渡って、私を現実に引き戻した。
「推論通り!太宰君は『触れた凡ゆる異能を無効化する』——逆に言えば転送局面に触れなければ空間接続は可能!」
大袈裟な考察ぶりだが、此方からすれば当然だ。実際、私の異能だってその方法で封じられているのだから。
「はい助手!大拍手!!」
「誰が助手だ……。それより2人に状況を説明しなくていいのか」
至極当然で尤もな意見を述べるシグマさん。
しかし私はその言葉に、微妙な心境で視線を横に流した。
ゴーゴリも笑顔で「あぁ〜大丈夫大丈夫!」と微塵も気にしていない。
だって————
「……成る程ね」
「そういうことですか」
彼等に説明など不要だ。
フョードルと太宰さんは既に状況を把握した。
ほらね、と云われて黙り込むしかなくなったシグマさん。
此の異常さにまだ慣れていないのか…羨ましい限りだ。
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ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» いつも作品愛を届けてくださりありがとうございます!原作ファンの一員としてなんとか良いストーリーを!と思っています笑 来たる年もぜひ宜しくお願いします! (12月31日 0時) (レス) id: 046a0c810f (このIDを非表示/違反報告)
うどん - 更新されるたびにいつもギラッフェさんにメッセージを送りたいほどギラッフェさんの作品を愛しています!!ギラッフェさんの作品はいつも作品に引き込まれるほどの素晴らしいストーリーだと思います!!原作の展開が予想できず大変だと思いますがこれからも応援しています! (12月28日 23時) (レス) id: b2d2242acf (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» 楽しんでいただけて何よりです!応援いただきありがとうございます! (12月11日 22時) (レス) id: 608d959404 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - ストーリーが繋がってきて、楽しいです!頑張ってください! (12月11日 19時) (レス) @page9 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» コメントありがとうございます!そう云っていただけるのが何より嬉しいです。是非是非今後ともよろしくお願いします! (11月24日 18時) (レス) id: 1ed6621db5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年11月14日 23時