ep405 ページ8
そう言い終えて机の上にだらりと突っ伏して溜息を吐く。するとそれと重なった晋助の溜息。
なんで晋助が溜息つくんだ?と思って突っ伏したまま首を回せば眉を顰めた神妙な表情で見下ろされる。
そしてゆっくりと口を開いた晋助は溜息混じりに言った。
「俺にはてめえの策が1から10まで理解できたことはねぇ」
……何だ急に。何の話だ?
「同じ門下で同じ師に同じことを学んだにも関わらずだ」
そこまで言うとみなまで言わせるなとばかりに微妙にじとりとした視線を投げて寄越す。
「……えぇ、最後まで晋助から聞きたいのに」
「酔ってんのか?」
……ほんとスパルタ。手厳しい。
酔っ払いの戯言扱いだよ。
でも確かにそれだけで晋助の言いたいことは分かった。
松陽から学んだことだけでなんとか自分という人間の輪郭を作り上げていた昔とは違う。
今までの出会いと別れの中できっと私は沢山の自分だけのものを手に入れてきた。
ならきっと言えるかもしれない……もう私の策は松陽のコピー版でも劣化版でもないと。
「あの頃の辛気臭ぇガキから何も成長してないわけねぇだろ。今までに手にしてきたもの、てめぇだけのものを使って戦う……それだけだ」
その言葉は私だけでなく、晋助自身にも言い聞かせているものなんだろう。目を逸らす様子から何となくそんな風に感じ取った。
「……そうだね」
さっきまで頭を覆っていた考えもアホみたいに思えて肩の力が抜ける。
「取り敢えずそんなことも判らねぇようなら話にならねぇ。寝ろ」
「なんでそうなる?」
「……眠いんだろ」
そう言われて気づく。あ、そうか…私働き詰めで寝ていなかった。
「はは、晋助のこと言えないね。じゃあ、失礼しようかな」
パソコンを片付けて、よいしょと荷物を持ち上げる。
「迷うんじゃねぇぞ」
「大丈夫、一通り案内してもらった」
部屋を出る時に、ふと足を止めて振り返る。
「……また明日の夜も来ていい?」
「酒は出さねぇぞ」
つまり承諾だな。
「ありがとう、おやすみ」
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時