ep443 ページ46
—no side—
桂は隣のAが銀時と高杉を眺めているのを横目で窺っていた。そして意外にも大人しいのが気になって、つい出来心で聞いてみる。
「恨み言の一つでも言ってやらないのか?」
「うーん……ここに来る道中で言わないって決めたんだよね」
決めた、という割には色々思うところがありそうな表情をしている彼女に桂は内心、難儀なやつだと呟く。
しかしAは……
「あいつらの2年間を否定すると私の2年間も否定することになりそうでね。
私はヅラの隣にいられた時間を良かったと思ってるから」
そんな台詞と共に桂を見上げて笑った。
……あまり眩しくなってくれるなよ、とこれまた胸中でひっそり呟く桂。不意にAの頭に手を乗せた。
「総理大臣専属参謀……任期満了だな」
「え、いまここで解約する感じ?」
眉を下げた彼女の表情。最初こそ意外に思っていた弱気な笑顔も、今ではすっかり見慣れたものになっていた。
2年間の情景が桂の脳裏を駆け巡る。その期間を良かったと思っているのは自分もだと……敢えて伝える必要もないだろうと笑った。
「ま、それもいいか。ヅラも総理大臣お疲れ様」
彼女の出した掌に自分の掌を出せば、パンと小気味の良い音がした。
「だが、拳くらいはキメてこい。バチは当たらんだろう」
それを聞いたAは「それもそうだね」と笑った後、「でもその前に……」と言って高杉に近づいた。
その手には抜き身の刀。
ギョッとして確かめた表情はまさに黒いものが渦巻いたあの眼だった。
「ぉ、おいA!それはいささかやり過ぎという——!」
呼びかける桂の声にも構わず、彼女は刀を振り上げ——
——……高杉の腕を斬りつけた。
するとそこから滲み出す血液。
それを間近で見ていた銀時は慌て、この後起こるだろう光景からAの眼を覆わんとする——
……が
「いい。知ってるから」
周囲の慌てぶりを意にも介さずAは高杉の傷口がみるみる塞がり、治癒していくのを見届けた。
しばらくその場に沈黙が降りる。
「…………知ってるってどういうことだよ」
「そのままの意味だよ。銀時が虚の心臓を持ってることも、教団の存在も、晋助がそうなったのも……知ってる」
全てを知りつつも2年間、自分達を野放しにしていた事実に銀時は眼を見開いた。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時