ep400 ページ3
「はぁ〜長かった。武市さんあそこまで怒らなくても……結局、船にはダメージ無かったんだから」
疲労困憊の様子で万斉の隣に腰掛けたA。
あれから暫く会議室で武市から説教を受けていたのが、今やっと解放されたらしい。
「ご苦労でござったな」
「万斉さんこそご協力ありがとうございました」
ハッキングしたデータを早々、各方面に共有したらしい彼女は「でも……」と少しだけ後悔を滲ませる。
「出来れば各フロアが何に使われてるかまで掴みたかったですけどね」
内部構造を盗み取っただけで十分過ぎるほどの功績だろうに、この参謀は貪欲すぎるにも程がある。万斉は苦笑いした。
その隣でAはコーヒーに角砂糖を5個…6個…と次々投入していく。
苦笑いの意図を綺麗に取り違えた彼女は「頭使った後の糖分補給です。いつもはこんなに入れてませんからね」とバツが悪そうにコーヒーを一口。
その様子を横目に万斉はもう一度尋ねた。
「何故、拙者だったのだ?」
それは「追い追い」と言って先刻はぐらかされた問い。
頼まれたハッキングのサポートは別に誰にでもできるようなこと。ならば攘夷時代の顔見知りや自分と比べて面識の深い武市やまた子を連れていくことだって出来ただろうに。
「他の人じゃたぶん止めるなと思ったから」
けろりとして答える彼女に、胸中であの願望強めの綱渡り作戦を思い返す。……確かに。
「拙者なら止めないと思ったのか?」
「えぇ。貴方ならこの手の興にはノると思ってました」
そう言う彼女は、まるでずっと前から鬼兵隊にいた同志かのような錯覚すら感じさせた。
——……不思議だ。
この参謀について知ったのは武市、また子が独断専行で攘夷四天王の同窓会とやらを企てた時のことだ。
見事思惑を砕かれ返り討ちに遭った2人が語った晋助の元参謀、前鬼兵隊の創設者……。
そんな人間が今晋助どころかどの攘夷四天王の隣にもおらず、ましてや真選組の参謀を務めていることに違和感しか感じなかった。
2人から聞く事の一部始終。彼女の言動は驚いているようで揶揄っているようで、しかしその実対処は冷たいくらいに冷静だった。
さぞかし狡猾で食えない人物なのだろうと……
そう思っていた。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時