地獄のプリンスは今日も死にたがり (ページ26)

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24話ページ26

Aside

「そう言うのは、魔法で出せたりしねぇのか？」

『…出せる事には出せるけど、それは僕の魔力を食べているだけで、味はもちろんの事美味しくないんだよ

材料さえあれば、ちゃんとした物を作れる』

へぇ…と頬杖をついて僕の様子を見守る猫の悪魔。別にいいんだけど、気が散る。まるで過保護な親みたいだ

ボワボワと頭の中で父さんが映るが、振り払う

後は蜂蜜を混ぜて、焼けば出来上がりだ

「よく作ったりするのか？」

『…昔はよく作ってたけど、最近は殆どだったかな
父さんはパンケーキを作るのが得意なんだよ。だから僕もよく真似して作ってた』

「それで、お前が得意なのはクッキーか？」

『はは、そうなんだよ。パンケーキは何度やっても失敗した』

彼とはあまり話した事が無かったので、少し身構えていたが案外そんな必要は無かった

やはり生きた年数と経験だろうか、会話が弾みやすかった

でもやっぱり彼もまた、悪人である事は変わらない
僕と彼との間の一線が消える事は、まず無いだろう

『わ、上手に出来た』

そして焼きあがったクッキー。美味しそうな匂いが充満する
味見にと2枚取り、1枚を彼に渡した

「良いのか？」

『最後まで居てくれてたのに、あげないのも悪いし』

そう言うと、もぐもぐと口を動かすハスク。僕も口に入れ、味見しながら他のクッキーを袋詰めする

「うめぇな。…何で袋になんか入れてんだ？腹減って食べるんじゃねぇのか」

『…実は僕、エンジェルに酷い事言ってしまったから、お詫びも兼ねて作ってたんだ』

クッキーなら、みんなの分も出来るし気も使わないでしょ？と言うとニッと笑顔を向けられて、そっと頭を撫でられた

『…？何』

「アイツはそんな事気にしちゃいねぇさ。でもアイツの事だ、お前から貰えると飛び跳ねるくらい喜ぶぞアイツ」

『そっか…。そうだと嬉しいな』

一つ一つの袋に名前を書いて、ラウンジのテーブルに置いた
朝、目が覚めたら見つけてくれるだろう

『よし、僕ももう一眠りしようかな…』

「A」

自室に戻ろうとした時だ、ハスクに呼び止められ足を止めた

「ここ汚れてるぞ」

『？、』

僕の頬に手を添え、目の下辺りをハンカチでゴシゴシと拭いてくれた

「HA！蜂蜜だなこりゃ。取れにくい」

『ん、もういいよ…！、』

恥ずかしい気持ちもあって、後は自分の袖で拭き取った
軽く礼を言って足を進めた後ろ、明日は死ぬなよと言われた

『だね。(…それもいいかも)』