鬼滅の刃 痛みの感じぬ子 弐

柒拾伍 ページ35

宇髄さんの指定した部屋へ入ると、ゴロリと畳の上に寝転がった。









慣れているとは言え、山越えは疲れる。









お昼までは、大人しく休ませてもらおう。









「それにしても、」









ここに来てから昔の話をよく聞かれる。









そりゃ身元もハッキリしてないのだから、気になるのは当たり前かもしれないけれど…









正直、昔のことを聞かれることに乗り気ではない。









思い出したくないものを嫌でも思い出すからだ。









…自分で墓穴を掘っているような気もするけど。






・








『はは、なんて汚い顔！！！』






・









あ







やだ









・









『今日は腕をちぎってみようか』









やめろ








・









『見ろ、昨日のは治ってるし足もちゃんとくっついてやがる。こりゃいいな』









やめて









・









『目を抉ってみようか、また戻せばいいんだから』









やめてください









・









『ほら、こっちへ来い』








・









「嫌だ！！！！！」









はっ、はっ、と荒い息をしながら目を覚ました。









どうやら知らぬ間に寝入ってしまっていたようだ。









身体中がじわりと汗ばんで、気持ち悪い。









あァ、なんて嫌な夢。









「ぅ、」









先程の夢を思い出して、吐き気をもよおす。









あの日課もだが、奴らの楽しそうな顔が頭に生々しく浮かび、抑えきれない吐き気に生理的な涙が滲む。









思わず外へ飛び出て、さっきまでいた裏の山へと走った。









木陰に着いた途端、堰を切ったように吐瀉物をぶちまけた。









吐いて、吐いて吐いて、胃液まで吐き出して、やっと吐き気が収まった。









「いつになったら、」









いつになったら、この呪いから解かれるのだろう？









側の木にもたれかかり、座り込む。









両親の呪いは、先生が死んでから余計に感じるようになってしまった。









先生がいた時は、先生が上手くなだめてくれたけど…









そんなことできる人、今はいない。









自分で、何とかしなきゃ。

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