【刀剣乱舞】LOVE/LIKE/アイ？【短編集】 (ページ36)

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温泉・怨霊ページ36

ある日の夜の見回り時間の事だった。
風呂場の前に2振の刀剣男士がいた。秋田藤四郎と平野藤四郎である。2振はブルブルと体を震わせ身を寄せ合っていた。明らかに様子がおかしい。

　「2人ともどうした。もう寝る時間だぞ」

びくりと肩を跳ね、今にも泣きそうな顔で振り返る。秋田は審神者と分かると安心したのかその場に座り込んでしまった。

平「あ、主さま、申し訳ございません。これには理由がありまして」

2振の証言は実は奇妙な物だった。誰もいないはずの風呂場から呻き声が聞こえたと言うのだ。厠に起きた秋田は肝を冷やし、一番頼りになる平野を起こしてもう一度風呂場へ向かった。最初は疑っていた平野も実際に聞くとすっかり怯え、2人して風呂場の前で動けなくなっていたという。

　「今の所聞こえないが」

秋「本当なんです！うぅ、とか、あぁっ、とか、そう、こんな感じで…」

「ううぅ…」

風呂場からだった。
平野と秋田はAにぴったりくっつき足をすくめてしまった。

平「きっと温泉の怨霊です！ここ古いですから…」

　「よし分かった。確かめて来る。もし30分経っても戻って来なかったら一期を呼んで来い。効くか分からんが帯刀して。いいな？」

2振は危険だと言って引き留めたが、丸腰の3人が犠牲になるよりはましだ。説得して暖簾を潜る。

声に近付くにつれ気付いた。低く不気味な印象だったが意外にも高く透き通った声だ。綺麗と言ってもいい。
脱衣所に踏み入る。ここまで来てしまったが、もし男士がいたらどうしようかとふと思う。いや、この時間に風呂とは逆に心配だ、これは人命救助だ、と自分に言い聞かせつつ声の主を探す。

その人物は脱衣所の一番奥にいた。薄桃の髪、白い肌、赤い縄。

　「亀甲…」

脱力、呆れ、安心、色々な感情がない混ぜになった一言だった。
亀甲貞宗は審神者の姿を目視すると、ぱあっと顔を明るくした。

亀「ご主人様！」

　「こんな時間にどうした？何をしている？」

亀「それが体を上手く縛る事が出来なくてね。同室の太鼓鐘と物吉の迷惑にならないようにここに来たんだけど…」

　「意外に難航している、と」

彼は顕現したばかりだった。よって兄弟とはいえ2振に遠慮したのだろう。そしてこの本丸の早寝早起き厳守という掟にも慣れていなかった。
Aは馬鹿、と小突きたくなるのを抑え、赤い縄を手に取った。

　「手伝う。その方が早く終わるだろ」

ああでもないこうでもないと四苦八苦しながら亀甲の体をきつく絞め、ぜえはあと息を乱し秋田と平野の元へ戻ったのは日付が変わる1分前だった。