捨身月兎 ギーツ 英寿 ページ22
2ウェーブの幕が開いた。ジャマーエリアに転送されると、探すまでもなくジャマトが襲いかかってくる。
参加者たちは仮面ライダーに変身した。腕輪の形を頼りに、自身が勝てるジャマトを倒していく。
おや、と違和感を感じたのはギーツを始めとしたデザイアグランプリ経験者だ。ジャマトが強くなっている。いや、1ウェーブの時が弱すぎたのだ。今戦っているのが通常の戦闘力だ。それでも、ある程度ダメージを与えれば倒せる強さだった。
それにしても、数が多かった。見渡す限りジャマトがいた。得点制なので敵が多いに越したことはないが、息をつく暇もなかった。気が付けば、周りに誰も居なかった。大分はぐれてしまったようだ。他の参加者は遥か遠くから聞こえる斬撃音で察知するしかなかった。
ふと、坂道を登る仮面ライダーの姿があった。バーニーだ。彼女は、丘の上の一際大きいジャマトに挑んでいる。丁度頂上の辺りで、日光に照らされたジャマトの腕輪を目にした。丸い形をしていた。
ギ「あいつ、何で……」
ギーツは一目散に駆け出した。途中邪魔が入ったが、掻き分けて走った。ジャマトに腕を掴まれ、後ろに引っ張られた。目の前を覆い隠すように、ジャマトの群体が襲いかかる。つんのめりながら、ギーツは丘の上に手を伸ばした。
彼女の体が宙に浮く。腹にジャマトの伸ばした蔓が貫通している。
何かが、切れる音がした。頭の血管、縁、命?
ギーツは一瞬でジャマトを蹴散らすと、バーニーの元へ駆け寄った。蔓は腹から引き抜かれ、ジャマトはどこかへ逃げて行った。
彼女の変身は既に解除され、IDコアには修復不可能なヒビが入っていた。
英寿は変身を解除し、出血を止めようと手で彼女の腹を押さえた。しかし、そこには何もない。ただの空洞だった。どこから手をつければ良いのか分からない状態だった。
ギ「何で……」
「……気を付けて、手は、一つだけじゃ……」
そこまで言って、彼女は吐血した。腹を貫かれたのだ。恐らく肺に穴が空いている。生きているのが不思議なくらいだ。英寿は手も顔も体も血塗れにしながら、彼女の口元に耳を寄せた。途切れ途切れの掠れ声で、彼女は英寿に言葉を伝えた。
「これ、使って」
そう言って、シザースバックルを彼の手に握らせた。元の色を忘れてしまうくらい、真っ赤に染まっている。
英「あぁ。後は任せろ」
「ありがとう…………ごめんね」
無慈悲な電子音と共に、彼女は消滅した。
バックルを握り締め、英寿は立ち上がった。「手は一つじゃない」の言葉の意味。そして彼女が最期に残したシザースバックル。つまり、あのジャマトは。
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いづみ(プロフ) - 刻卯さん» 承知しました! (2023年2月28日 15時) (レス) id: c26acdadd4 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - いづみさん» 敵同士なのに好きになっちゃった的な設定でお願いしたいのですが難しいかったら甘めのお話をお願いします。 (2023年2月28日 7時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
いづみ(プロフ) - 刻卯さん» コメントありがとうございます!リクエスト了解しました!何かご希望の設定や展開はございませんか? (2023年2月27日 21時) (レス) id: 28595e5e52 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します。ギーツでキューンくんを書けたらで構いませんのでお願いします。 (2023年2月27日 16時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2022年12月2日 22時