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暁サイド



倉庫の中に駆け込む。

喧騒と、鍔鳴音、刀特有の摩擦音。

どこか鉄くさい、戦場の香り。

そう、人の血の香り。

懐かしさに一瞬本来の目的を忘れそうになるも、

すぐに思い出して辺りに目を走らせる。

・・・やっぱり。

倒れて見えない人数を差し引いても、

この倉庫には人が少ない。

騒がしい音と声を頭から追い出し、

耳を澄ましてみた。

”チッチッチッチッチ・・・”

かすかに鳴る、秒刻みの機械音。

においに混じってかおる、

素人くさい火薬のにおい。

爆弾。

まさかここまで情報の隠ぺいが。

山崎のあの一言が無かったら、

私たちは全員木端微塵だ。

ここで爆弾を解除すれば、私の首が飛ぶだけで済む。

音を頼りに探れば、

木箱の中から聞こえてくる。

しかし生憎、戦闘の意志はないことを伝えるために

愛刀、’夜桜’は置いてきている。

・・・どうする??

このままじゃ爆発してドカンだ。

何か斬るもの・・・

その瞬間、音が戻った。

ギリギリ・・・と、刀がなる。

侍としてはクズだが、

今は時間が惜しい。

隊士と向き合っている浪士を脚で蹴り飛ばし、

気を失わせてから刀をもらう。

「え・・!?」

と隊士が何か言っているが、あとで弁明しよう。

一旦刃に目を走らせ、

斬れるかどうかだけ確認する。

・・・たぶんこれなら大丈夫だ。

取りあえず、木箱を斬る。

真横に斬り、上をどけると不格好な爆発物が。

先ほどの隊士は、

他の浪士に絡まれていてこっちを見ていないから、

まあ、堂々とさらしても大丈夫だろう。

早くしないとこっちにも剣先が向けられかねないし。

いつも持っている何でも道具の中から

ドライバーを取り出し、ゆっくり開ける。

素人作りだから、導線を斬るだけで止まるだろう。

回路を慎重に読んで、切るべき方を探す。

「!?
 白水!?お前一体!??」

土方の声。

集中したいというのに。

ああ、早くしないと爆発してしまう。

私なんてもうどうなっても構わない。

でも、まだ侍を夢にしてる奴らがここにいるんだよ。

こんなところで、殺すわけにはいかないんだ。

導線は、青、赤、黄、の三本。

この回路で行けば、切るのは赤。

そう見当をつけた時だった。

「白水っ!!」

土方の絶叫が聞こえた。

振り向けば、刀を振り上げた浪士。

”ザシュウ・・・ッ!”

音を立てて刃が滑り、鮮血が舞う。

刀から血が、滴った。

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作者名:語り屋誠 | 作成日時:2017年3月7日 5時

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