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俺が会ったチビ共にとって、少し先の、未来の話。
その日も俺は、母の目を盗み見て彼女の携帯から未完成のセカイに行き、天馬……司とショーの話をしていた。
「少女を笑顔にするために、ここでどーんと、空からメリーゴーランドがふってくる！」
「えぇ、メリーゴーランド？ 一人だけなのに？」
「正義の味方ペガサスマンはやさしいからな！ 少女だけじゃなく、みーんなが笑顔になれるように、空飛ぶメリーゴーランドを用意したんだろう！」
「へぇ……！」
みんなを、笑顔に。
それは幼い彼がしょっちゅう口にしていた言葉で、これまた幼い俺には、酷く魅力的な響きがした。
「私にも、できるかなぁ」
「む？ 何がだ？」
「ペガサスマンみたいにさ。みんなを笑顔にしてあげたいなって」
「――……っそうか、そうか！」
夢への共感者が現れてそれほど嬉しかったのか、彼は身を乗り出して俺の手を掴んで。
「ならば……ともに目指そうではないか！ みんなを笑顔にできる、スターを！」
「で、でも、スターって二人もいていいもの、なのかな」
「ぐ、た、確かに」
しばらく二人して考え込んだ後に、彼が「そうだ」と声を出す。
「オレは、ショーでみんなを笑顔にするスターになる！ ので、お前はべつのものでスターになれば問題ないだろう！ だから、わかるだろ？」
「……あっ、そういうことだね！」
二人して顔を見合わせて、くすくすと笑う。まるでとっておきの内緒話をするような口調で、俺は続けた。
「私は歌で、みんなを笑顔にする！ それで、司くんと一緒に、スターになるよ！」
「ああ、かならずや叶えてみせよう！」
約束だね、とお互いの小指を絡ませたその日を境に。
「A？ 何をしているの？」
「あっ、お母様……！？」
俺はセカイへ、行けなくなった。
⭐︎
カーテンを潜った先は、案の定舞台裏だった。
木製の椅子、積まれた段ボール、古びたスコア、そして、青色の、カーテン。
何をしても開かなかったその先にはきっと、約束の場所が待っているはずで。
そして、今の俺は、ここを開ける鍵を持っている。
本当の想いという、何にも勝る鍵を。
指先が、滑らかな布地に触れる。
「――――――――」
瞬間、バッと勢いよくカーテンが開かれる。
大きなショーテント。眩しいくらいの光と、楽しげなBGMを背負って、そこにいたのは。
「………………A」
「うん」
ぽけん、と丸くした瞳に、徐々に涙を溜めていく姿を見て、「迷惑かけたな」と言って。
「ただいま。……約束、守りにきたよ、司」
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