演目『代弁☆まいせるふ!』 ページ24
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「お待たー……あれ、類は?」
「あやつは先生に捕まって説教中だ」
「はぁ……。で? 今度は何だ」
そう聞くと、「校庭に穴を開けらしい」と返ってきて、まあ、予想通りの返答だった。たまには三人仲良く食べようと約束したばかりだってのに、何してんだ。
「今回は火薬も絡んでいそうだし、当分離してもらえないだろうな」
「火薬? あの人火薬使うの??」
「まあな。オレの前髪が何度チリヂリになったことか」
一番重要な部分を相槌一つで済ませて、司は被害にあった前髪のことを語り出す。
いやいやいや前髪より火薬の件もっと話すことあるよな。
「まあ俺が気にすることないか」
座ろうとしたところ指摘されて、渋々ハンカチを敷く。全く本当に、変なところで育ちの良さが垣間見えるな。声量もそれくらいお上品だったら直良なんだけど。
「いっただっきまー……。なんだ、言いたいことがあるんならさっさと言えよ気持ち悪い」
「エ゛ッ。あ、すまん、顔に出てたか?」
「バッチリ。『すごく不思議で疑問です』ってデカデカと書いてある」
コイツ、本当にわかりやすいな。
あまりにも強い視線を感じ、呆れた顔でそれを伝える。どうやら本人は全くそのつもりがなかったらしい。
「いや、しかし、大したことじゃないというか、あまり踏み込まれたくないだろうから」
「えぇ? 今更そんなんないだろ、誤魔化される方が居心地悪い」
そう言ってみるけど、司はいつまで経ってもごにょごにょごにょごにょ。
急になんだ。変なものでも食ったんだろうか。
じぃっと視線で催促をすると、一通りごにょり終わった司が言葉を慎重に選びながら、といった風に口を開いた。
「本当に気に障ったらすまん」
「いい。俺の器は海よりも深いからな」
「深い意味はないんだが……Aは、“俺”なんだな、って思っ、た、んだ」
「……あぁ、なんだそういう」
さっきからやけによそよそしいというか、遠慮している理由がわかった気がする。確かに、言い出し辛かっただろうな。
暗い顔をしている彼には申し訳ない、が。
「ごめん、お前が期待しているような理由は、っていうかそもそも、特に理由もないんだ」
「そ……う、なのか?」
「うん。なんていうんだろ、逆らいたかったんだ」
当たり前に。
こうして考えると、中々に子供じみた単純な動機だと思う。でもきっとあの頃の俺には、自分の呼び方なんていう些細なこと一つも、己を縛る鎖に思えたのだろう。
「ガキの反抗期だよ。とにかく全部変えたくて。あー懐かしい、部屋の物全部出して、ちょっと壊してみたりとかもしたっけ。まぁ、俺にもそういう荒れてた時期があったってわけだ」
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