＿＿ ページ3
.
ふわふわ、ふわり。
あれ、ここは、どこだろう。
身体がどこかに浮いている気分がする。上を向いているのか下を向いているのか、目が覚めているのか未だ眠っているのか、皆目見当がつかない。
《あ、おまえ、今日もきたのか！》
突然、背後から声がしてギョッとする。振り返ると、一気に鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。
虹色の、遊園地。
眼下に広がる変な景色に目を見開いた。なんだ、ここ。ていうか俺本当に浮いてたのか？
《うん！ わたしね、また新しいお歌おぼえたから、きいてほしくて》
再び、声。諸々の疑問は取り敢えず置いておくことにし、視線を走らせて主を探す。
小さな人影二人が、目に留まった。
「――……ん？」
数回瞬きをする。見間違いじゃない。
目を擦る。見間違いじゃ、ない。
《ほんとうか！？ じゃあこの前おまえが言ってた、みゅーじかる、というショーはできるか！？》
《たぶん、できるとおもう！》
俺。と、恐らく、天馬。
一体全体どういうわけか、そこには今より随分幼い様子の俺達がいた。背格好からして、5歳ほどか。
《それではっ、ショーステージへ出発！》
《おーっ！》
なんとも微笑ましいやり取り。これが普通の子供達で、俺も浮いてなんかいなければ、いい笑顔で生まれたマイナスイオンを摂取していたところだろう。
おいおいおい、これはなんの冗談だ？ あのちっこいのは正真正銘自分のはずだが、肝心の俺にはこんな記憶はもちろんない。
つまり俺は幼い頃の自分の姿を今の今まで勘違いしていたのか、それともこれが全て幻覚か。どっちにしろ最悪だ。
二人を見失うわけにもいかないので、顰めっ面をしながらもあとを追う。依然、ぷかーと宙に浮いたままだ。
「どこまで……おっ、ついたか」
ちびっこ二人が潜っていったのは、大きなサーカステント。後を追って、俺も天井から通り抜けて(もうこの辺を気にするのはやめにした)中に入る。
《あっ、二人とも！ また来てくれたんだね〜っ！》
揺れるツインテール。ハイテンションな喋り方。猫のような衣装。
見紛うことない、それは俺が良く知る、皆は知らないセカイのミク。
「……いよいよ、わからなくなってきたな」
眉間を押さえて空を仰ぎ見る。あ、この天井の布の感じ、舞台裏のセカイのカーテンに似てんな。ウケる。
情報を処理しきれなくなった脳みそで、現実逃避気味にそんなことを考えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
