演目『勉学☆あふたぬーん!』 ページ18
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かりかり、ぱさ、かり……からん。
「だぁめだ……ひとっつもわかんね……」
「こら、諦めるんじゃない」
やらずに苦労して困るのはお前なんだぞと、こういう時だけ変な先輩風を吹かせてくる司をジトリと睨めつける。
「わからないもんはわからないんだから、しょうがないだろ」
放課後の1-Aの教室。
窓から西陽が差し込む時間帯になれば当然残っている生徒なんているはずもなく。そしてそんな中何故か俺は司と共に学習に勤しんでいた。
いや、理由なら一応ある。
「次のテストでコケたら補習だと先生に釘を刺されたのだろう? そろそろやらねばマズいと自分で言ってたじゃないか」
「いや言ったけどさー……それがなんで司と勉強会になるわけ?」
「すぐやめてしまうお前を監視する為だ、ほら口ではなく手を動かせ」
「セリフが母親」
「……言っておくが補習になったら練習には参加させないからな」
「え゛」
それはよくない。非常によくない。
涼しい顔のまま自分の課題に戻っていく司が恨めしい。座長権力ってか。お前だって大して成績良くないくせに!
しかしここでごちゃごちゃ言っても、コイツの意思はきっと変わらない。大人しく勉強するのが一番早いのだが、わからないものはわからない。
「じゃあちょっと教えてよ、ねぇ先輩」
「言い方が妙に刺々しいな……まあいい、どこだ?」
「えっと、ここの……えーっとなんだったけな名前。三角パイ?」
「三角比」
「そうそれ。それ使う気がするんだけど、θどこ」
「それはだな……」
顔に見合わず(?)つらつらと難解な公式や用語を並べていく司。聞いてみたはいいものの相変わらずちんぷんかんぷんだ。そもそも三角比ってなに。
ちらりと前を盗み見る。普段と違って静かな表情で淡々と解説を続ける姿が目に入った。伏せられた瞳からの視線が問題集の上を滑る。
声が右から左へ流れる中、じぃっと司の顔を見つめる。憂を帯びてるような、そんな顔。
なんというか、すごく。
「お前……美人だな」
「で、ここが60°だか……は?」
「普段うるさいから霞むけど、こう、黙れば美人? 意外とイケメン? うぅん、そんな感じ。いやぁ、もったいねぇなぁ」
「は???」
目がまん丸くなって、あ、いつもの司に戻っちゃったと残念に思う。本当に、静かにしてれば絵みたいに綺麗なのに、もったいない。
きっとこの後は「オレはいつでもかっこいいに決まってるだろ!!」とか続くんだろうな。危険信号、総員耳栓用意。
「………………」
そうしてさりげなく耳を抑えるも、しかし、想定していた衝撃は届かない。
おかしいな、と思って、顔を上げてみると。
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