▼ ページ17
.
「……ふぅん？ つまりセンパイ、冬弥がAとソウイウ仲だと勘違いして、やきもち妬いたんすか？ オレらを呼び出してまで確認するほど？」
「……もしかして」
流石に鈍感を極めた冬弥もこの時点で気づいてしまったようで。初めて恋バナをするJK(実際恋バナは初めてだ)のような眼差しを向ける。
自分の犯した過ちにわなわなと震え出す司。先ほど掘った穴は墓穴だったらしい。
彰人は心底、この状況を楽しんでいた。だってあの天馬司が恋をしたという。しかも相手は自分への好意には微塵も気付かない世紀のにぶちん。
気になる。気にならないワケがない。
「で、どこが好きなんすか？ 馴れ初めは？」
「ええい、言わん言わん！！ もうこの話はお終いだ！！」
「司先輩、後学の為にも是非、お願いします」
「何を学ぶんだ！！？」
まさか冬弥にまで詰め寄られるとは思ってなかったのだろう、否定を忘れて突っ込んだ彼。
密かに、これはいけると彰人は思う。後一押しだ。
茹で蛸状態で立ち去ろうとする司の背に、あからさまに残念そうな声をかける。
「ほら、その様子だと全然意識してもらえてないんすよね？ あー、オレ、困ってるセンパイを助けてあげたいなぁー」
「そうですよ。三人寄らば、と言いますし。少しでもお力になれれば……」
「う、ううぅぅ……！」
純粋な(？)後輩達の視線に負け、司は渋々座り直した。
「す、少し、だけだぞ」
「はいはい。早く吐いちまえよセンパイ」
もじもじもちゃもちゃ、椅子の上で恥ずかしげにする仕草だけ取れば恋する純情可憐な乙女だ。ただ一つ残念な点を挙げるとしたら、それが天馬司であることか。
「えっと、馴れ初め？ は、えー……。小さい頃、少しの期間一緒に遊んでて、その時はもちろんなんともなかったわけだが、急に会えなくなって、オレも成長して……いつの間にか、す、好きにだな、なっていた、というか……」
「…………」
「ッな、なぜ黙る！？ こちらは恥を忍んで白状したというのに」
「もしかしてセンパイ、幼稚園の頃にした『結婚しようね』の約束を真に受けるタイプ？」
「違う！ そもそもそんな約束しとらんわ！」
「いい話だな……」と感動的な声を漏らす冬弥とは違って、彰人は呆れたような顔をする。
「そりゃ、こっちがポンコツだったらくっつく物もくっつくかないか」
「おい、どういう意味だ彰人！？」
ほんの少しからかってやるつもりだけだったのに。
彰人の世話焼きな一面が炸裂し、気付けば男三人で割と真面目な恋愛座談会をする羽目になったのは、ここだけの話である。
☆
「っへぇっっくしょい！！ ずびっ、ううん、風邪か？」
演目『勉学☆あふたぬーん！』→←演目『恋情☆でぃすかっしょん！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
