演目『恋情☆でぃすかっしょん!』 ページ16
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彰人と冬弥は頭に無数のはてなマークを浮かべながらB組で待機していた。
というのも、つい先ほどたまたますれ違った司から何やら真剣な面持ちで「話がある」と呼び止められ。内容を聞いても教えてはくれなかったし、様子からしてどう転んでも愉快な話になる予感はしない。
教室内の生徒が段々まばらになってきたところで、呼び出し人は現れる。
「すまない、遅くなった!」
「いえ、そんなに待っていませんので、お気になさらないでください」
彼の姿を見るや否や、「司信者スイッチ」(彰人がこっそり名付けた)が入った冬弥は笑顔でフォローを入れる。
相棒の盲目っぷりに少し恐怖を覚えながら、彰人は「で、なんすか」と話の先を促した。
「ああ、そうだな……いや、ううむ……だが……」
「何か、言い難いこと……なんですか?」
「そう、なるな。まぁ、うん……えー……」
いつになく歯切れの悪い彼に、彰人は首を傾げる。変人ワンがこうにまでなるなんて、一体どれだけの悪いニュースなのか。
一通り悩み、唸ったあと、ようやく司はその理由を話す気になったらしく。おずおずと口を開いた。
「えぇと、実は。先日、見てしまって……」
「何を?」
「あー……すまない、覗く気はなかったんだ。……その、冬弥が、Aに抱き、ついているのを」
「…………???」
「彰人もいて、何か言い争ってるようだったから、一体お前達はどういう関係なのか、気になって……しまって、だな……」
ぽそぽそもごもご、普段の自信たっぷりな姿からはかけ離れた話し方で一気に捲し立てられて、二人は顔を見合わせる。
「ぁぃやッ、別に、責めてるとかそういうのじゃなくてな、ただ単純に疑問というか、本当にこう、ああ何を言ってるんだオレは……!?」
段々司の目がぐるぐるし始めて、これはまずいと冬弥が一旦止めに入る。
「落ち着いてください、司先輩。それに俺は海星に抱きついてはいません」
「すまない冬弥っ、やはり後輩の恋路を邪魔するなど言語道……へっ?」
「先日、色々あって抑えていただけです」
かくかくしかじか、事情の説明が進むに連れて彼の顔はみるみるうちに火照りだす。話が終わる頃にはもう湯気が立ち昇っていてもおかしくはない状況だった。
自分の勘違いが恥ずかしくて恥ずかしくて、もう穴があったら入りたい。いっそのこと自分で穴を掘ってしまおう。
その一連の行動に、何かを察した彰人。ダメ押しとして、カマをかけてみることにした。
「だから、センパイが心配しているようなことなんて一つもねーっすよ」
「なッ、誰も、オレが見てて嫉妬でどうにかなりそうだったなんて言って……あ」
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