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「あ、弟くんじゃ〜ん! やっ、ほー……?」
ふいに背後からそう聞こえて、首だけ回して振り返る。
淡いピンクの髪色にマッチするリボン。ぽけーんと状況をイマイチ理解していなさそうな顔がなんとも愛嬌のある、カワイイ子。
あれ、確か彼女は、同じクラスの……。あんまり授業に出てないようだから面識はないけど。
「あれ、もしかしてお取り込み中? 痴話喧嘩?」
「ちげーよ!!」
「誰がコイツなんかと」
「なんだ、息ぴったりじゃん!」
ぴょぴょいっと軽い足取りでやってきた彼女は俺の前まできて。
「ボク暁山瑞希、なんだかんだ話したことなかったよね」
「そうだなあ。で、俺は海星A……って、なんだその目」
やっと冬弥に解放してもらえた手を差し出すけれども、肝心の暁山は変な風に固まって、そしてこれまた変な物を見つけたような顔をしている。
知らんうちに気損ねちゃったかな、と少し心配になる。
「……おーい、大丈夫かー?」
「――っううん、ぜんっぜん元気!! 仲良くしようねっ、Aちゃん!!」
「え、あ、おー……よろしく」
かと思えば急にいい笑顔で食いついてくるもんだから、本当にわからない。
さりげなく背後に視線で問うてみるけれど、二人ともに肩をすくめられてしまった。知り合いらしかったけど、それでもこの奇行は理解できないらしい。
神山高校って、変な奴ばっかなのかな。
「で、何か言い争ってたようだけど、どうしたの?」
その一言に、今まで考えてた全てがすぽーんと抜け落ちる。代わりに思い出される、あの怒り、屈辱。
よくぞ聞いてくれた。よくぞ聞いてくれた!!
先程の酷すぎる仕打ちを早速語って聞かせてやろうと、意気込み口を開いて、
『それはコイツが』
「…………」
しー……ん。
なんとも言えない静けさを破ったのは、堪えきれずに吐き出された暁山の笑い声だった。
「っふ、あっははは、ははっ、ね、ねぇちょっと何今の……っ!!」
「二人とも、案外いいコンビなんじゃないだろうか」
そのまま崩れ落ちてしまった暁山に、「もう俺はお払い箱か?」と冗談めかして言う冬弥。
かぁぁ、と顔に羞恥やら怒りやらが集まって。
「もう……っもう知らんッ!! 俺帰る!!!」
かっこ悪いことこの上ないが、今の俺にはその場から逃げるように走り去るしかなかった。
「彰人なんて、彰人なんてもう友達じゃねーーーっ!!!」
捨て台詞として残されたその一言は、あたりに木霊して消えていった。
☆
「ところで暁山、さっきはどうしたんだ?」
「え? ……ああ。えへ、ボクと同じかなって、思っちゃって」
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