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サボり。無断で。二日間も。
――やばい。
母さんに一言断ってから事前に準備してあった手土産を引っ掴んで、全速力でワンダーステージへ直行。
そして、冒頭に戻る。
そろそろ腰が辛くなってきて、もうお辞儀やめてもいいかな、と元の姿勢に戻ろうとすると、ぎろりと寧々に睨まれる。
ヒィ、と漏らして、大人しく視線を地面に落とした。
「ふっ、ふふ、ま、まぁ、それくらいでいいじゃないか寧々。君がAくんの事が心配で心配でたまらなくて、こうして無事に会えて安心しているのはよぉく、わかったから。……ぶふっ」
「そ、そうだぞ寧々。同じ歌姫同士気掛かりなのはわかったのだから……っ、く、ふ……っ、それではAが……可哀想では、ないかっ、っ」
『っなに笑ってんの!!!』
こうして、俺の隣に二人、頭を下げる仲間が並んだ。
☆
結局俺達はえむの必死な説得・擁護に救済され、今後の話し合いも兼ねて観客席で休憩を取ることに。
そこで俺は(まだぷんすこしてる寧々のご機嫌取りの意味も込めて)家から持ってきたせめてもの謝罪の品を配ることに。
「あの、これ。よかったらみんなで食ってくれ」
「えっ、なになにーっ!? Aちゃん、それなーに!?」
「ほう……マドレーヌか」
「ピンポン、大正解」
大きめのタッパーから姿を現したのは、狐色に輝く貝殻の形をしたお菓子。
見た目抜群、食べればふんわり、程よい甘さの3コンボで確実に美味いこと間違いなしの自信作だ。
「うわぁぁ、美味しそ〜! あっ、ねぇ寧々ちゃん見て見て、無人島で見つけたちっちゃい貝さんみたいな形してるよ!!」
「確かに、似てる」
「これは見事なものだねぇ。それに入ってるってことは、手作りかい?」
それ、と言いながらタッパーを指差す神代に大きく頷く。
「ああ! 遠慮なく食べてくれ、俺なりの謝罪と感謝の品だ、ほらほら」
「そういうことなら」
『いただきます』
各々が一つ手を取って、ぱくり、一口齧る。
俺はこの瞬間が限りなく好きだ。
「――――!!!」
ふんにゃり、幸せそうな表情に変わる、この瞬間!
『お、おいしいっ!!!』
「お前っ、これっ、お前、は???」
「司くん正気に戻って」
「うぅ〜っ、ふわふわのとろとろで……お口の中がわんだほいパラダイスだよぉ〜っ!」
「これ、作るの大変だったでしょ」
キラキラした笑顔で四人に詰め寄られて、顔のニヤケが収まらない。
「喜んでくれたのなら、よかった!」
こうして手作りお菓子でありがとう大作戦(命名俺)は大成功に終わった。
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