＿＿第二幕＿＿ ページ8
．
「……ただいま」
「おかえりなさいA」
ダイニングに母の姿があるのを見て、思わず顔を逸らす。
マジか。面倒だ。
「貴方が自分から叔父様の公演を見に行きたいと言うだなんて、珍しいわね」
「別に。この前最後まで見ていられなかったから。気になっただけ」
「そう。……ねぇ、A」
まだ何かあるのか、と階段手前で振り返る。ついでに、早く終わらせろ、とも視線にこめておいた。
母はしばらくの間、言いたい事を口の中で転がすかのように俯いていたが、やがていつもの調子を装って話し始めた。
「叔父様といえば、先生が明日から数週間、この近くに来るんですって。どうかしら、せっかくだし、もう一度――」
「言ったはずだ」
遮った声は、自分でも驚くほど鋭く尖っていた。母の表情が固まる。
「もう歌はやらない。音楽もだ。……おやすみなさい」
母が俺のことを呼び止めたような気がする。特に今日は、その話をするつもりはない。色々ありすぎて少し疲れてしまった。
自室の扉を閉める。
「っはぁぁ゛ーーー…………」
前言撤回。すっげぇ疲れた。
倒れ込むようにベッドに入る。俺はそのままあっという間に目を閉じてしまった。
☆
「きりーつ。気をつけー、れーぇ」
「ありがとうございましたぁ」
間伸びした号令と共に昼休みの喧騒が教室に訪れる。委員長、前のヤツに隠れて寝てたの、俺は優しいから言わないでおいてやるよ。
「A、一緒に食べよー」
「あー、ごめん。今日は他、当たってくれ。いつか埋め合わせするから」
「えー珍しー。まいいよ、美味しいお菓子期待してるね」
「ったく調子いいな」
お菓子、という言葉に反応した数人が自分にもくれ、とたかる。悪い気はしない、が。
敢えて顔を顰めて、連中を見回す。俺のありがたみをもう少し教えねば。
「言っとくけどお前ら、材料費だってバカになんねぇんだぞ。タダで食える事にもっと感謝の念をだな」
「神様仏様、A様！ どうか憐れな私共にお恵みをぉ！」
「ふっ、くく、ははっ、わ、わかればよろしい、あははは！」
「ちょっ、笑わないでよ！」
自分から仕掛けておいてなんだが、あまりの必死さに吹き出してしまう。これに免じて明日にでも少し豪華な物作ってきてやるか。シュークリームなんかはどうだろう。
クラスメイトとの会話を終わらせ、教室を出る。一人になって途端、なりを潜めていた記憶がぶり返す。当然、昨日のことだ。
朝適当に買った惣菜パンを片手に走り出す。目指す先はもう決まっている。
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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (
レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶（？）みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です！！お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます！！ (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです！応援してます！ (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
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