＿＿ ページ14
．
「待て待て待てーっ！！」
ちょっとごめん、とピンク女を退かそうとしたところを止められる。
「見事に振られたねぇ」
「司ドンマイ」
「何故だ！？ 何処に断る要素があったというのだ！？」
「強いて言うなら全てだな」
連れてこられた理由はなんとなくわかった。いや嘘だな。まだ半分ほどしか理解していないが、その半分の情報だけでも、俺はもうここにいても時間の無駄だと判断していた。
「つーかなんで俺がショーをやらなきゃいけないんだよ」
「それは、実は」
「あたしたちね、もっとキラキラ、ワクワク、わんだほーい！ なショーがしたいの！ それでそれで、お客さんたちを今よりももーっと笑顔にするんだっ！！」
「だから今それをオレが……まぁいい。えむの言う通り、オレたちは今よりも素晴らしいショーをたくさんの人に届けたいんだが、いかんせん、人手が足りなくて」
「ふーん、あっそ」
何も考えていなさそうに見えて意外とちゃんとした事情があるらしい。だからなんだって話だが。
というか、そもそも、
「なんで俺？ もっと適役がいたはずだろ」
「それは！！」
俺の質問をかき消すほどの声量で天馬の大声が通る。ただならぬ雰囲気に口をつぐんだ。
彼はゆっくりと口を開く。
「それは……」
ごくり。
「スターたるオレの素晴らしい勘がそう言っているからだ！！」
しーん、と場が静まり返る。彼の大声に続くそれは余計痛々しく感じる。
なんとか振り返って、まだ話の通じそうな紫に聞く。
「な、俺帰っていいか？」
「まぁそう想うのも無理ないねぇ」
「何故！？」
逆に今ので俺が気を変えて頷くとでも思っていたのか。俺がそんなにちょろく見えるのか、それとも天馬の頭がおめでたいのか。
きっと後者だな。俺はちょろくないし。
「諦めてくれ、先輩。何言っても俺は動かないぜ」
今度こそ、ピンク女を引き剥がす。何を思っているのか、抵抗せずにすんなりと離れていった。
「じゃ、そういうことで」
背を向けその場から歩き出そうとした俺の頭に誰かの声が反芻する。男の声だ。それを聞いたのは、数年前、家から飛び出したちょうどその日。
『いつかきっと、Aちゃんの歌が報われる時がくる。覚えていて。キミを必要としてくれる人は必ずいるから』
――その機会自ら切り捨てるのか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (
レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶（？）みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です！！お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます！！ (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです！応援してます！ (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
