検索窓
今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:55,654 hit

Continuation2 ページ24

結局あの世界が何だったのかなんて分からない。
けれど、死後の世界だとか、Aの記憶もしくは理想の世界だとか、そう言ったものなんだと思う。多分。

実際、死んだはずの佐藤という事務員や、赤髪の男、そしてAが1番その世界に合った様に存在していた。
僕はつまり、ジラジラした作り物でも、彼女達みたいな死者でもなく、意識だけを飛ばしていたから半透明だったのだろう。
確認する方法も無いから本当の事は分からないけれど、多分あっていると思う。

__
___

「何笑ってるのさ」

『いや、…幸せ、だなって』

「……リッカは、たまに変な事を言うね」

『だってそうでしょう?』

「まぁ…」

『…こんな時間が、ずぅっと続けばいいのにね』

___
__

彼女と、確かこんな会話をした。
あの時の僕は自分の方が死んでしまったのだ、と信じて疑っていなかったから、最後の彼女の言葉を自分の感情と重ねていたが…
あれを1番望んでいたのはAの方だったのだ。
最初から、彼女はこの時が終わる事を知っていて…それでいて、あの台詞を言ったんだ。

泣きそうに笑いながら、あの幻の中で、僕に訴えかけていた。



探偵社を出れば、向かう先はただ一つ。
賑やかな通りに出ては、ひたすら其方へ歩いた。時計塔の針は四時三十分と言ったところか。
…うん、多分間に合うね。

街の人の声は煩い程に、僕の耳へ入り込んで来る。
ごちゃごちゃとしている大通りは、皆、初詣だなんだで幸せそうだった。
けれど、何度も見たAの笑顔には、それは劣っている。あの時間旅行の最中、僕はこの目に焼き付けたのだから分かるよ。

…一つ、疑問があるとするならば…彼女はどうして、自分が死ぬと分かっていてもあんな笑顔ができたのだろうか。


Continuation3→←Continuation1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (140 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
81人がお気に入り
設定タグ:文スト , 悲しい , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:泣ける話
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

カナ - 夢小説に自分の伝えたいことをこんなにも自然に綺麗に入れていてとても素敵だなと思いました。これから感謝とかをきちんと伝えていきたいと思いました。ありがとうございます。 (2021年11月23日 16時) (レス) @page29 id: 35e821d5d5 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん太郎 - 感動しました。最後ボロ泣きでした。死ぬと自分も相手も何も出来なくなりますもんね。ちゃんと周りの人に感謝とか伝えていこうと思います。佐藤さん出てきて嬉しかったです。最後の太宰さんも感動! (2017年1月13日 18時) (レス) id: 0f5e4549d3 (このIDを非表示/違反報告)
千秋 - とても感動しました。青春定理の作者と同一人物とは思えないしんみり……( 死ぬって何も私達には分からないですけどやっぱり、究極の別れみたいなんだな……と思いました。とても素晴らしかったです。 (2017年1月4日 23時) (レス) id: b5473cb104 (このIDを非表示/違反報告)
東條にこ(プロフ) - 太宰さんと佐藤さんの話も以前読んでいたものです。 最後まで涙が止まりません。いろんな意味で本当にありがとうございました! (2017年1月3日 20時) (レス) id: db321f67f6 (このIDを非表示/違反報告)
HANA - 涙が止まりません(・・,)。なくなった物はなくなってから大切だって気づく。良い言葉です。どちらの気持ちが理解できてとても感動しました。ありがとうございます。 (2017年1月3日 19時) (レス) id: 09909c1fdf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:棒付きキャンディと愉快な仲間達 | 作成日時:2017年1月2日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。