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3話 ページ3

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それはまだ中学3年の頃。
入試の日。

私は高校入学と同時に引っ越すため、宮城の高校入試を受ける。
わざわざ新幹線で前日から来ての受験。

入試が終わって、まだ寒さに慣れない中私は、校舎を出て歩き出す。
息を凍らせながら前を歩く背の大きい2人の男子。

1人は金髪の天パ、もう1人は黒髪の天パ。
引っ越す前だし友達はおろか知り合いさえいない。


「あっ」


リュックのチャックがしっかりしまっておらず、金髪くんの筆箱が落ちる。
彼はそのことに気づかない。

私は筆箱に向かって少し駆け、それを拾う。
緊張で激しく動く胸を落ち着かせ、金髪くんに声をかける。


「あのっ」


振り返って、不思議そうに私を見る金髪くんと黒髪くん。
私は金髪くんに筆箱を渡した。


「落としましたよ」

「ありがとうございます」


貼り付けたような笑みと、ペコッと上から頭を少し下げる。
受け取ったあとポイ、と筆箱をカバンに入れて今度こそしっかりチャックを閉めた。

そのまま歩いていく彼ら。
宮城に来て母以外との初めての会話。
なんだか嬉しくてたまらない。

私は走って彼らを追い越した。


「受かってたら同じクラスだといいね、月島くん! ばいばい!」


私はそう言って、母の車に乗った。

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ゆめこちゃん(プロフ) - すごく好み、、(?)で、素敵な作品でした、、。きゅんきゅんしましたありがとうございます(; ;) (2020年8月26日 4時) (レス) id: 6313a1e292 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 彩(プロフ) - 相成るさん» コメントありがとうございます! そう言っていただけて本当に嬉しいです!御愛読ありがとうございました! (2020年1月4日 20時) (レス) id: 8a1a36a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
相成る - すばらしいっ!! (2020年1月2日 23時) (レス) id: c03a59c17d (このIDを非表示/違反報告)
海石榴《ツバキ》(プロフ) - 時雨 彩さん» 終わってしまうのが名残惜しいですが、とても素敵な作品をありがとうございました!! (2019年12月20日 23時) (レス) id: 906a0c9fbd (このIDを非表示/違反報告)
時雨 彩(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» コメントありがとうございます。テストがあって更新ペースは遅い時期もありましたが、そう言っていただけて嬉しいです。御愛読ありがとうございました! (2019年12月20日 23時) (レス) id: 8a1a36a2a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時雨彩 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年12月11日 22時

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