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「随分と辛気臭い顔をしてるな」
地を這うような重低音と共に、ランプの灯りが冷たい壁を照らしてゆらゆらと揺れる。
顔を上げようとすらしないチーノの隣で、代わりにショッピの深く濁ったアメジストの瞳が男に向けられる。……否、正確には男“達”だったが。
十数人ほど集まった見覚えのある顔ぶれに、彼は面倒臭そうに唇を動かす。
「……なんすか。見せもんじゃ、ないん、すけど」
数日ぶりに声を発した喉は話すことさえ忘れていたようで、ショッピは軽くむせる。
肘を引き寄せてケホケホと不健康そうな咳を数回繰り返しているうちに、灯りを持つ先頭の男が鉄格子の前まで歩みを進める。
帝国シュラハントの現皇帝＿＿＿グルッペン・フューラー。
Aの婚約者でもあった人物だ、と掘り起こした記憶を見てショッピは漠然と思う。
オレンジ色の灯りに照らされた金髪は、そのカリスマ性を象徴するかの如く、眩い光を放っていた。
「A・リネアント嬢から遺言を預かってきた。お前達のことは今日限りでクビにするから、精々残りの余生を楽しめ、と」
「…………そう、すか」
あぁ、Aらしい。真っ先に彼の頭に浮かんだ言葉はそれだった。
最期まで自分だけが悪役になって、そのくせ誰よりも残酷な命令を残して死んでいった、俺達の主人。
ショッピはこの数日間で初めて笑みを浮かべた。
綺麗とは到底言い難い、少しだけ歪で不器用な微笑み。
それでも、彼にとっては心からの笑顔に違いなかった。
ショッピのその姿に、男は暫しの逡巡を挟んで「それから、もう一つ」と言葉を続ける。
「＿＿＿＿＿＿愛してる、とも言っていた」
「っ……」
その言葉が届けられた理由は、グルッペンの慈悲によるものなのか、憐れみによるものなのか。
彼は少しだけ考察して、けれどすぐにどうでも良いと切り捨てる。
受け取ったとて、どうせ俺達の寿命は残り一日も無いのだから。
「……その遺言が聞けただけで俺らは満足です。どうか一思いに殺してください」
「本当にいいのか？既に主従関係が切れているなら、我々としてもお前達の意思を尊重するつもりだが」
「変なとこで甘さ出さん方がええっすよ。気力がないってだけで、アンタらに対する恨みは別に晴れてないんで」
今ここで牢獄の外に出されても、今更Aの居ない世界に生きる意味など見出せない。
そうなれば俺達は間違いなく、復讐という道を選んだのちに自死するだろう。
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青のり(プロフ) - もずくさん» コメントありがとうございます！過去と未来を行き来してるので、書いていると自分でも時系列がこんがらがることが多々ありますが、これからも凝った物語を書けるように頑張ります！ (2月12日 3時) (
レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
青のり(プロフ) - 黄色ピンさん» コメントありがとうございます！作者自身、一目惚れとかよりも徐々に心情が変化していく物語が好きなので、今回のお話でも徐々に変わっていく様子に力を入れて書かせて頂きました。ここから更に他の方々も出てくる予定なので、続編も良ければ見て頂けると嬉しいです！ (2月12日 3時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
もずく(プロフ) - 初コメ失礼します！評価が高かったので気になって読んでみたら面白くて一気に読んでしまいました！ここまで物語が凝ってるの素晴らしいです！続きが気になって仕方がないです！更新楽しみにしてます！ (2月11日 7時) (レス) @page49 id: 1244f44c8f (このIDを非表示/違反報告)
黄色ピン(プロフ) - 初コメ失礼します!ヤバい好きすぎる、、、。従者さんたちの気持ちを考えると泣けてくる。敵側の人たちも少しずつ考え方が変わってきていて、もう続きが気になって仕方がありません!!!体調に気を付けて更新頑張ってください!楽しみに待ってます!!! (2月10日 16時) (レス) id: 219b739472 (このIDを非表示/違反報告)
青のり(プロフ) - しがないﾃﾚﾀﾋﾞ推しさん» コメントありがとうございます！やり直す系にしてはやたらと物語の進みが遅くて申し訳ないなと思ってたんですが、楽しんで頂けているようで嬉しいです！ウォーアイニーの方もその内進めていきたいなと思ってるので、良ければ気長にお待ち頂ければ幸いです（笑） (2月9日 23時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
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