37#一縷の望み、もしもの望み ページ39
(Side,国広)
政府の話は、そう長いものではなかった。
枸杞の正体は、後に審神者を多く輩出することになる名家の祖先であること。僕と枸杞が今まで何をしていたか、何処にいたのかを明かすこと。
ただそれだけ。
僕は今までのことを全て伝えると、何とも言えない顔をされた。そりゃそうだろう。堕ちた刀剣など、本来ならば刀解されてもおかしくないのだから。
しかし、藤審神者の担当官は首を横に振った。
「貴方は彼女の歴史に大きな影響を与える存在として記載があります」
「悪い意味で、ですよね」
「いえ、彼女と共にいる運命です」
聞き間違えじゃないかと思った。驚いて藤審神者を見ると、優しく微笑んでいた。
「僕、いていいんですか?」
「はい。歴史上問題ありません。また、遡行軍側の情報提供をして頂ければ、
「本当に……それだけでいいんですか?」
「政府と致しましても、優秀な人材を失うのは痛手ですから」
「……分かりました。僕が知ってることは全て話します」
もう過去などどうでもいいのだ。
枸杞が光の当たる世界で生きられるのならば。
役人は満足そうに帰って行った。
僕らの処分は帳消し。
枸杞が目覚め次第、この本丸を後にし、政府へ赴くという手筈になった。
「歴史修正主義者、だったんですね」
「そうですね」
「何故?」
「黒鳶に騙されていたんですよ。枸杞は真面目だから」
誠実な娘。
愚かな娘。
馬鹿と天才は紙一重だとは言うけど、阿呆だ。否、僕も考えが甘かった。
「この先、どうするおつもりで?」
「枸杞が昔に“もしも”の話をしたことがあるんです」
「もしもの、話ですか……」
「審神者になって、自分の本丸を僕と運営していきたいそうです。だから、それが現実になるのならいいなと思ってます」
そう、現実に。
枸杞なら、やれる。
「では、もう少し此処で学ぶといいでしょう」
「え?」
「研修期間、まだ半分は残っていたでしょう?」
「……それがいいかもしれませんね。是非、彼女に限度、ってものを教えてあげて下さい」
「頑張りやさん過ぎて無理しすぎますからね」
「ほんと、その通りです」
もう、心は清々しく黒い淀みは何処かへ消え去っていた。
(これ、枸杞さんの作る浄化札を解析して作ったんですけど)
(……回路、よく読み取れましたね)
(難しかったですよ)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
