36#浅葱に向けられた矢尻 ページ38
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数日前、時の政府にとある本丸からの一報が入った。
長らく行方不明であった、名のある神職家系の息女が見つかったかもしれない。
とのことだった。
一週間後、その本丸の担当官が赴いた所、その問題の少女は一振りの刀に寄り添われ、縁側に放心状態で座っていた。
寄り添っていたのは黒い着流しを纏った堀川国広で、少しぎこちない笑みを浮かべた。
「……主さんに、ご用ですよね?」
「私、藤様の担当官を務めている者です。藤様からお話は伺われておりますか……?」
「ある程度は。主さん、行方不明で探されていた人なんですってね」
「はい」
堀川国広は淡々とそう言い、彼女の腰を抱き寄せ、頭を撫でた。そうすると当の少女の表情が、少しだけ柔らかくなったような気がした。
「藤様も交えてお話をしたいのですが、宜しいでしょうか」
「構いませんよ。乱くん、いるよね?」
「うん、いるよ」
柱の影から現れたのは何故か女物の浴衣姿の乱藤四郎。
彼は堀川国広の前に姿を現すと、何かを察したように何処かへと向かった。
「藤審神者を呼びに言ったんですよ。この部屋に来ます」
「そう、ですか」
堀川国広は少女を軽々と抱き上げると、部屋の中へと戻り、彼女を敷いてある布団へと横たわらせた。
「政府の人なら分かるでしょうけど、あの一件の時、霊力の大量消費のし過ぎでこの状態が続いているんです。器が元から大きいので安定値に戻るまでかかりそうなんです」
「貴方は、何者なんですか」
「あはは……案外突っ込んだ質問をしてくるんですね」
堀川国広は少し顔を顰めると、苦笑しながら言った。
「僕は彼女の刀。守り刀。……それだけです」
「……そうしておきます」
「意外と鋭いですね。僕、感心しちゃいました」
「……」
こんな掴み所のない堀川国広に出会うのは初めてだった、と担当官は後にそう言ったらしい。
しばらくすると、藤を連れて乱藤四郎がやって来た。
「御無沙汰しております」
「いえ、此方こそ」
「“堀川さん”。貴方は枸杞さんの傍についたまま、話に参加してもらって平気ですからね」
「ありがとうございます」
(では、本題に入らせていただきます)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
