34話目のお話 ページ35
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先程の電話から30分後…
Aの部屋の玄関チャイムが鳴った
駆け足で玄関へ向かい扉を開けると
親友のまりが立っていた
彼女の表情は少し曇っている
「いらっしゃい…」
「お邪魔するでー」
まりはそう言ってAの横をすり抜け
部屋へと上がっていった
その後を追いかけてAも部屋へと続く
まりはベッドに腰掛け、Aの様子を伺っているようだ
部屋を一周見渡して
おもむろに自分のバッグから週刊誌を取り出し
ポンとテーブルに置いた
「はい、これ。見てみて」
表紙には
『坂本勇人に新恋人か?!』
と大きな見出しで書かれている
Aはそれを恐々とめくり
見出しのページに辿り着く
そこには坂本と女性が写っており
2人の顔が接近している写真が
大きく見開きで取り上げられていた
「…!」
Aの顔がみるみる青ざめていく
「やっぱり、Aなんやね」
Aの眼から
大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちた
「どうしよう…オリンピック始まるのに
こんなことになるなんて…」
「A、詳しく話してもらえるかな?」
ーーー怒ってるわけじゃないよ、大丈夫。
そう言って、まりはAの肩を抱き寄せ
ゆっくりと話を聞いてくれた
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「そかー、そういうことやったんか…」
Aは泣きじゃくりながら、まりに全てを
包み隠さず話した
けれど、週刊誌に書かれている
『坂本勇人の新恋人』であったり
『深夜の密会』であったり…
「こんなんは全部ウソや
梅野さんと坂本さんと私の3人で食事やったし
坂本さんだけスマホの充電しに私の家に来たけど
充電が終わったらすぐにタクシーでホテルに帰った」
「もちろんキスもしてないし?」
「うん、横っツラどついたけど…」
そう言うとまりはお腹を抱えて大爆笑した
「ごめ…ほんまアンタらしくておもろいわ!」
まりは涙を流して笑っている
オリンピック開催まであと1週間ちょっと
今この時期になんで?
こんな大事な時に…
自分のことより何より
今、強化合宿に参加して頑張っている
坂本さんと梅野さんの2人に大きな迷惑がかかる
もしかしたら私のせいで
2人が代表から外されてしまう事だって考えられる
Aはそう思うと悔しくて、涙が止まらなかった
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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年7月4日 19時