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イデアはオルトに一方的に語り続けた。
お経のように延々と息継ぎ以外音が続く。

大きな長身の体をイデアは縮こまらせて、俯き始めた。

「もう!兄さん、兄さんは気持ち悪くなんて無いってば!

……兄さん、本当にAさんにアプローチできるの?」

オルトはイデアを疑っているような顔で見た。
イデアはハッとしてフードを深く被り顔を隠す。

「そ、それは……」

「なるべく早く結婚してっていうのに快諾しちゃった訳だけど……」

「そ、送信取り消し!今すぐ送信取り消ししてオルト!」

イデアは焦ったようにオルトにしがみつく。
オルトは困った顔をして兄をたしなめる。

「もう父さんと母さんから返信きちゃったから無理だよ」

「じゃ、じゃあやっぱり無理だって送って!」

「……言いづらいんだけどさ、兄さん」

「ひっ、何!?」

「父さんも母さんも大喜びでAさんに「今度うちの息子と見合いをして欲しい」って送っちゃったんだって」

「気が早すぎるでしょ……何それ……拙者そこまで手が早いと思われてるの?

心の準備ってやつがあるじゃん……。

あ!それこそ送信取り消ししてもらってよ」

「Aさんのお父さんが快諾したってさ」

「ああもうどうしてこうなんだ!大人って言うのは!

……拙者の人生終わり。
親たちは家同士が仲良くなるからいいんだろうけどさ、

……A、あ、いや女の子にとっては地獄でしかないわけじゃん……。
なんなのこの世の中辛すぎ……」

イデアは許嫁同然となった少女の名前の由来口に出すと小っ恥ずかしい気持ちになり、

咄嗟に「女の子」と言い直した。
その変化にオルトは気づき、かすかに微笑んだ。

「まあまあ。とりあえず返信を待ってみようよ。

きっと兄さんなら大丈夫。僕の自慢の兄さんだもの」

繊細な兄を傷つけないように、オルトはイデアを自室に放り込んだ。

オルトは心の準備ができていないイデアのためにしばらくはそっとしておこうと思った。

こんなチャンス二度とないよ。
イデアが将来幸せで生きるためのチャンスは、きっとこれっきりだ。

そう思うくらいに、イデアは人と喋るのが苦手だった。

イデアは頭の中がいっぱいいっぱいになって、
少しだけ苦しかった。

家族以外の誰かのためにこれほどまで悩んだのはきっと今くらいだ。

僕にとっては大切な人でも、彼女からしたら僕はキモオタでしかない。

そう思う度何故か、胸が痛くて仕方なかった。

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- リクエストありがとうございます!詳しく書いてくださったのでわかりやすいですね!書くのが遅いので順々になりますが必ず書きます! (2022年5月19日 18時) (レス) id: 8a6bf88ba9 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - リクで鬼滅の刃で夢主が妓夫太郎を養子にして夢主が妓夫太郎に付けた名前は飛鳥 妓夫太郎は夢主に依存して夢主は妓夫太郎を溺愛してる (2022年5月11日 18時) (レス) @page1 id: 70be676ed1 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエストありがとうございます!承りました〜今書いているのが終わったら取り掛かりますね! (2022年3月18日 17時) (レス) id: 8a6bf88ba9 (このIDを非表示/違反報告)
スピカブラック - リクエストでアズールで甘で書いて下さい! (2022年3月17日 17時) (レス) id: 7ca7b99cb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年2月2日 22時

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