言質 ページ1
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元はと言えば、私が悪い。完璧に悪い。
恋人が話しかけているのにも関わらず、スマホに夢中になっていた私が、完璧に悪い。
今自身の手首に手錠がかけられており、光の入らない部屋にいるのは、
完璧に過去の私のせいなのである。
そもそも私は昔から大変肝の座っている性格であった。大抵のことは適当に流していても、なんとかなると昔から思っていたたちである。こんな性格があってからか、ある晩。私はやらかしたのである。
「 ねぇ、この膝掛けは使ってもいいかい? 」
こんな問いかけを彼 …… 太宰治から聞かれていた。生憎、私はスマホに夢中であったために、
『 うん、 』
と適当に答えた。スマホに指を走らせながら彼のことを見向きもしなかった。己が蔑ろにされたことに拗ねたのか彼は、
「 君のこと、抱き締めてもいいかい? 」
冗談ではあったのだろうが、そう問いかけてきた。結局その問いにも
『 うん、 』
と適当に答えた。その時も私の視線はスマホのみであった。当時の私はまともに彼の問いを聞こうとしていなかった。それも、スマホに夢中になっていたせいであるのだが。これにも拗ねた彼は、相変わらずの底の見えない笑みのままこう問いかけた。
「 君のこと、閉じ込めてもいいかい? 」
『 うん、 』
『 …… ん? 』
返事をした後にふと疑問に思ってやっと彼のことを見上げた。
“ 閉じ込めてもいい ”
この言葉の真意がよく分からなかった。聞き返すかのように絞った声はしっかり彼に届いていた。
「 君が私の部屋で永遠に過ごしてもいいか、許可を貰っただけさ。 」
「 いいんだろう?君は。 」
『 え、よ、よくないに決まってるじゃん!!! 』
彼が言う“ 永遠 ”という言葉に重みを感じる。無論、同棲であればいいのだが、彼が言うにはそうではないようで。流石の私もそれを懸命に否定する。
「 前からずっと思っていたのだよ。…… 君は悪い虫をつけすぎだ。そろそろ私も我慢がならない。 」
不気味な程に彼は笑顔であった。
ふと、スマホが落ちる音がした。私はそれを拾うことはしなかった。
否、拾えなかったという方が正しい。力が入らなかったのである。
私の視界は暗転し、静かに闇の中に溶け込んでいった。
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MOON(プロフ) - にゃるめさん» 最初はシリアス予定だったんですけどね 👉👈 もうこのままポップでいきます 🥰 是非お楽しみにー♪ (3月18日 6時) (レス) id: 0e6f7cd00b (このIDを非表示/違反報告)
にゃるめ(プロフ) - シリアスになる筈なのに、結構ポップみがあると思うのは私だけでしょうか?逆にそれが良い(語彙力) これからも頑張ってください!応援して待機、! (3月17日 19時) (レス) id: ec6dc57dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MOON | 作成日時:2024年3月15日 17時