Secret paradise (ページ7)

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ななページ7

止めてほしくないのは本心だった。

でも、あまりにもあっさり言われるから驚いた。

だって普通、目の前で人が死のうとしていたら

何かしら止めさせようとするものだろう。

声までかけておいて止める気はないだなんて、
薄情にも程がある。

『あぁ、幽霊だから道連れにしようとしてるんでしょ！
　だったら納得』

「はあ？？」

割と真剣に言った私の言葉を

斜め上の男子は素っ頓狂な声と笑いであしらって

楽しげな顔のままで続けた。

「おまえの命はおまえのものだろ。それをどう扱おうが、
　口を出す権利は俺にはないよ。だから止めない。」

「死にたいなら死ねばいい」

首を傾げる仕草で少し長めの黒髪が額の上を流れた。

大きな瞳が瞬きをする。

微笑みは相変わらず、重い夏の空気には似つかわしくない。

『なら、早くどこかに消えてよ。
そこにいられると気が散るから....』

踵を返し背を向けた。

爪先をもう一度屋上の縁ギリギリに合わせた。

シューズの先の学年の色である緑に染められた部分だけが
はみ出るように足を置いた。

シューズはまだ数ヶ月履いただけだから綺麗なほうだ。

飛び降りる時、靴を脱いで置いておくのが常とうみたいだけれど

いかにもなのは苦手だからそのまま履いておくことにした。

ここから一歩、足を踏み出すだけ。

たったそれだけのことで、ほんの一瞬、

一つの呼吸すらし終わらない間に私はこの世から消える。