【金カム】坊主頭に興味が湧いて参 (ページ44)

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143話　柄にもなくページ44

アイヌの言葉をいっぱい教えてもらって
道中何度も死にかけては助け合い…

網走から樺太、ロシアまでキロランケ達と旅して…
札幌で土方一派のみんなと酒を呑み交わしながら夢の話で盛り上がって…

色々な出来事が昨日のことのように思い出されては消えていく。

白石「どしたの？急に止まっ……て…」

ついてくる気配が無いことに気付いた白石が振り向くと、瞳を潤ませた彼女の横顔が目に映り、思わず言葉を飲み込んだ。

貴『……楽しすぎたなぁ…って…』

ミツキは少し困ったように笑いながらそう言い、白石に視線を向けた。
彼女の瞳に夕陽の赤が差し込み、キラキラと揺れては複雑な色を醸し出す。

そんなミツキの表情は、胸をギュッと締め付け苦しくさせる。

白石「…っ」

白石は静かに近づき、彼女の頭にそっと手を添え自身の懐に引き寄せる。

貴『へ…』

白石「ごめんね……ちょっとだけこうさせて？」

驚いて声を漏らすミツキにそう言い、彼女を抱きしめる腕に力を込める。
独特な匂いと温もり、赤から黒へと染まりつつある空が、ミツキの心を落ち着かせていく。

貴『…クサ…』

白石「…クーン」

されるがままだったミツキは白石の腕の中から離れると、そのまま彼の手を取り五稜郭へと繋がる橋に足を向けた。

貴『…早く行きましょう、真っ暗になる前に』

白石「…うん、行こ」

夕日が二人の伸びた影を地面に映し出し、手と手を繋ぎ静かに前を歩くミツキの細い背中を見つめながら、自身の胸の中の感情に、柄にもなく戸惑ってしまう。

"好きだ"という気持ちはこんなにも簡単に、心を満たしてしまうものなのだろうか。

俺ってこんな女々しかったっけ…
そんな問いが頭をよぎるも、すぐに掻き消す。
今はただ、この小さな手を握りしめていたい

…

二人は無言のまましばらく歩き続け、五稜郭内部へと足を踏み入れた。

貴『たしかこの辺に…って、え？』

白石「アレ…？」

最後に白石が古井戸を埋めて隠し直したはずのその場所には、土で覆い隠されていないどころか蓋の開けられた古井戸がポツンとあった。

白石「……なあにこれ？」

ミツキと白石は状況が理解できず、しばらくその古井戸の側に立ち尽くす。

白石「か……艦砲射撃のひとつが当たって、きっとこうなったんだヨネ…？」

貴『う…ウンウン……たまたま、ネ？』

地面に手をつき、その古井戸を覗き込み二人は半ば現実逃避するようにそう言う。

貴『し…白石さんッマッチ！マッチで中を確認しないと…！』