123話 大きな強み ページ24
貴『お…お手柔らかに…』
牛山は「ふん…」と鼻を鳴らし、白石の首から手を離す。
ボトリと地面に落ちたまま、白石は間の抜けた顔をする。
白石「…」
こりゃ詰んだな…という顔だ。
そんな中、杉元だけが決意に満ちた顔つきで口を開く。
杉元「…戦うしかない。ここに籠城して…
奴らを迎え撃とう」
牛山「…ふん」
白石「第七師団相手に俺たちで…？」
貴『…そんなこと…出来るんでしょうか…』
そう不安に思う中、杉元は「それに…」と続ける。
杉元「土方歳三は既に手を打っている…そうだよな？」
白石「え？」
土方「ここまで余裕がないのは、まったくの想定外だったがな。午後の汽車で向かっているはずだ。夏太郎に駅で待機させている」
貴『…ソフィアさん達か…』
どうりで姿が見えないと思った…。
土方「奴らはロシア軍と戦ってきた、百戦錬磨のゲリラたちだ。白石や門倉たちよりは遥かに戦える。無謀な戦いにはならん。…それに、我々にはもう一つ大きな強みがある。
この土方歳三が函館で戦うのは二回目だ。
ここでの戦い方をよく知っている」
貴『…！』
そうだった。
自分たちには"あの"土方歳三がいる。
それのなんと心強いことか。
土方の臆せず堂々とした態度、声、表情が、ミツキの中の不安を拭い去る。
土方「ソフィアたちが来るまであと六時間程度。戦闘の準備と金塊の捜索を並行して行う」
…
それからミツキ達は兵糧庫の中の床板を全て取り外し、その下の地面を掘り進める。
貴『…っんしょ…』
白石「おいおい、ミツキちゃん…撃たれたところから血滲んでるぜ！少しは休みなよ」
貴『…ふう……このくらい出来ないと、どっちみちこれからの戦いで死んじゃいますよ。白石さんこそ、掘る速度が遅くなってきてますよ。大丈夫ですか？』
ミツキが掘りながらそう尋ねると、白石は疲れを吐き出すようにため息をついて腰を下ろした。
白石「うん……もうヘトヘト…」
杉元「…やっぱり建物の中じゃなくて、堀に隠したと思うんだがなぁ…」
白石「でもジジイが"ここ掘れわんわん"って…」
貴『ジジイって…』
もう当然のようにジジイ呼びが定着していることに、ミツキは苦笑いしながら作業を続ける。
杉元「何か確信が？そうなんだろ？」
土方「…」
そう杉元に尋ねられるも、土方は黙ったままだ。
そんな時ふと、ミツキの記憶の片隅で長らく埃を被っていた心当たりを思い出す。
貴『…！ひ…土方さん……もしかして…』
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月12日 11時
