58話 縋る者 ページ9
キロ「まあ、俺は香水なんぞ無くても…女が寄ってくるけどなぁ…？」
貴『はえー…顔が良いと得ですな…』
白石「ふぅー！全身が麝香！」
キロランケがそう言ってミツキを見つめウインクをかますも、ミツキは話半分に聞いているのか反応が薄い。
貴『…ふぅ…ちょっとオソマ〜』
ミツキはそのままアシㇼパ達から離れ、近くの森の木のそばにもたれかかる。
貴『眠…』
尾形「…目に隈も作って、夜通し俺とキロランケを監視でもしたか？やめておけ、やるだけ無意味だ」
ついてきてたのか。
貴『…何の用事ですか？尾形さんもうんこしにきたんですか？残念ながらここは私の縄張りなのでダメですよ』
尾形「北見の時…お前、何か見てただろ。家族写真か何かか？」
貴『…見てたんですか…？』
まさか見られていたなんて思いもしなかった。
この人、気配を消すのが上手いんだな。
尾形「……俺にも見せてくれよ、写真」
貴『…は？急に何を…』
言いかけるも、尾形のこちらの目を見据える眼差しに何を覚えたのか分からないが、辛うじて形を保っている紙切れを袖から取り出し、彼の差し出す掌に握らせる。
貴『……これで、チタタプの件は終わりですよ。もう無効です』
尾形「…おい、何故写っている奴らの……顔が無いんだ」
家族の顔が見たくなくて、穴を開けたのか？憎いのか？
そんなに憎んでいるのなら、何故わざわざ袖に入れて持ち歩いているんだ？
酷く歪で不気味なソレは、尾形の興味を引くのには十分であった。
俺と"同じ"なのか…？
貴『………言ったでしょ、もう無効です。あんまり見ないでください』
ミツキは目を細めそう言うと尾形から写真を返してもらい、アシㇼパ達の元へ戻るためその場を後にした。
アシ「峰山、オソマしてきたのか？長かったな、便秘か？」
貴『ん……』
白石「…？」
珍しく顔を合わせないようそっぽ向いたまま答えるミツキに違和感を覚えるも、とても聞ける雰囲気ではないので放っておくしかなかった。
アシ「おい白石、峰山…！見ろこれ……うんこだ！！まだ湯気が立ってる！近くに大きな獲物がいるぞ！」
貴『……や…この臭いは…恐らく違う…』
勘の良いミツキは、鼻を摘んでうんこから距離を取る。
白石「……それさっき俺が出したうんこだよ？」
…
それから樺太アイヌの犬ゾリに乗り、一行は敷香まで来ていた。
白石「ねえねえ〜、金ないんだったら〜またアレとればいいじゃん！クロテン！」
貴『可愛かったな〜クロテン』
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
