57話 正夢と麝香 ページ8
アシ「…杉元の夢を見た。必ず迎えに行くって」
白石「…正夢かもよ。俺、あいつが死ぬとは思えないんだよなぁ…」
アシ「何言ってんだ白石！あいつが死ぬわけないだろ。あいつは…不死身の杉元だ」
そう話したアシㇼパは再び横になり、隣で聞いていたミツキがふと大きなあくびをした。
白石「あれ…ミツキちゃん…もしかしてずっと起きてた？」
貴『…眠れなくて…』
そう言うミツキの目の下には、隈がうっすらとだが出来ていた。
キロランケ達を警戒して眠れないのだろうということがわかる。
白石「…俺達を殺そうと思えば、とっくに殺してるはずだ。
あんまり無理すると、せっかくの可愛いミツキちゃんのお顔が台無しだぜ？」
貴『…じゃあ…くっついて寝てもいいですか？』
白石「…！お、おう…」
白石のすぐ隣に横になり目を閉じる。
温もりで安心したのか、すぐに眠りに落ちた。
…
樺太養狐場にて。
キロ「トドの肉を買ってくれる所があると聞いたんだが…」
男「狐はなんでも食うよ。魚ばっかじゃ栄養偏るから、餌料には牛とかくじらとか、色々混ぜんのよ。トド肉もありがたいわぁ」
アシㇼパとミツキが金網の向こうにいる狐を観察する。
貴『見てアシㇼパさん、この狐黒いよ。可愛い〜』
アシ「本当だ、黒い狐ばっかり…ここにいるのはほとんどシトゥンペカムイだ」
男「黒い毛に白い差し毛が入っているのは銀狐って言って、毛皮として高級品なんだよ」
白石「結構儲かってんだ〜…いいねぇっ！」
その言葉に白石が反応し、ミツキもつられて笑う。
ぐぎゅ…るるる…
貴『うーん…お腹すいた…』
白石「…狐って食えるのかねぇ？」
……
それから暫く一行は進み、ジャコウジカを仕留めた。
アシ「ジャコウジカは美味いのか？」
キロ「いや、肉が美味しくないし、毛皮も売り物にならねぇ。ただオスはち○ぽとへその間にジャコウ線と言う分泌液を出す部分があってな…嗅いでみるか？」
アシ「ｸｯｯｻｲ…！！おしっことアチャの脇の臭い…ッッ」
貴『どんな脇してんですか…』
あまりの臭いに咳き込むアシㇼパに、少しでも楽になるようミツキがポンポンと彼女の背中を叩いてやる。
アシㇼパに続いて尾形もその臭いを嗅ぎ、まるで猫のように口を半開きにする様はとても可笑しかった。
キロ「これを乾燥させると、麝香という漢方になる。薄めると香水として、異性を惹きつける効果があるそうだ」
その瞬間、突然キロランケはバサリと胸元をはだけさせる。
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
